譲渡・売却先の探し方、選び方のポイント
⽬次
- 1. 譲渡先は同業種か、異業種か?
- 1-1. 同業への譲渡
- 1-2. 異業種への譲渡
- 2. 譲渡先は近隣にあるか、遠隔地にあるか?
- 3. 譲渡先は事業会社か、ファンドか、個人か?
- 4. 譲渡先は上場企業か、未上場企業か?
- 5. 譲渡先の目的は何か?
- 6. 譲渡先の企業文化・価値観とギャップはないか?
- 7. 終わりに
- 7-1. 著者
会社の譲渡・売却を通じてどういう会社になりたいか、そのためにどんな相手に会社を売却したいか、イメージし明確化することは非常に大切です。
本記事では、売却する相手を探す時、そして具体的に検討する時のポイントについてご紹介します。
譲渡先は同業種か、異業種か?
相手の業界、業種が同じか、異なるのかによって、期待できるシナジー(相乗効果)は異なるため重要なポイントです。
同業への譲渡
同業の会社との統合であれば、自社との比較がしやすく、互いに足りないものを補うという観点で統合後のシナジーをイメージしやすい傾向にあります。また、生産効率の向上やコスト削減、市場シェアの拡大、競争力の強化のほか、バリューチェーンの補完による関連事業領域の拡大も期待できます。
同じ業界内で相手企業が持つ技術やノウハウを取り入れることで、製品・サービスの改善や新たなイノベーションが生まれる可能性も考えられます。
しかし、自社の業界が縮小傾向にある場合、同じ業界でばかり探していても、積極的な買い手が見つからず時間ばかりが過ぎることになりかねません。
また、ニッチな業界の場合、自社がM&Aを検討しているという情報が思わぬところから漏洩するリスクを避けるため、あえて同業ではなく異業種から候補先を探すケースもあります。
異業種への譲渡
一方で異なる業種の会社であれば、シナジーによっては自社単独では不可能だった新領域への展開など、成長可能性が広がります。
新たな事業機会や市場への進出が可能になるかという点で検討する
を評価しましょう。異業種の会社との統合によって、新しい市場や技術、顧客ベースにアクセスできる可能性があります。
また、事業の多様化が可能になり、市場変動や業界特有のリスクへの対策が取れます。リスクの分散や事業の安定化が期待できるかを考慮しましょう。異業種の企業との統合によって、
新たな技術やノウハウを獲得し、新たなイノベーションや競争力の向上が期待できます。
同業種か、異業種か、最初の時点では条件を絞り過ぎず、自社固有の特徴をふまえ、可能な限り幅広い可能性を模索することが、早期に、満足度の高いM&Aを実行する上で重要になります。
譲渡先は近隣にあるか、遠隔地にあるか?
近隣地域の会社との統合では、地理的な近さにより、統合後のプロセスがスムーズに行える可能性があります。また、統合による事業成長で、グループだけでなく地域の雇用や地域経済の発展に貢献できる可能性も期待できます。
一方、遠隔地にある会社との統合では、地域に依存しない事業展開や市場の多様化ができるため、新たな顧客層の獲得や事業領域への進出、リスクの分散効果が期待できます。
遠隔地にある会社でも、M&A後にPMIのコンサルタントが両社を行き来し、統合プロセスをサポートするという側面もあります。
譲渡先は事業会社か、ファンドか、個人か?
一般的に、譲渡・売却先として多くの経営者が思い浮かべるのは「事業会社」です。
近年は、中小企業のM&AにおいてもPEファンドなどが買い手となるケースが増えています。
PEファンドは、譲受けた会社へ様々な経営資源(人材やノウハウ、資金など)を投じて、経営をサポートしながら、企業価値を上げていきます。
そのため、ファンドへの譲渡は会社を飛躍的に成長させられる可能性があり、将来的にIPOへの近道になるほか、親族や社内関係者に社長を継がせたり、プロ経営者を社長として招聘してもらうなど選択肢が広がります
また、経営者を志す個人(サーチャー)が、ファンドから資金を調達し、自らが承継したい会社を探して、オーナーと交渉してM&Aを行うケースも生まれています。M&A後はサーチャーが社長としてその会社の経営を担います。
サーチャーと会社がお互いを見極める期間を十分にとり検討できるため、双方にとって自分の価値観に合った相手を探しやすくなります。
譲渡先は上場企業か、未上場企業か?
上場企業は、一般的に認知度が高く、グループの一員となることで、自社の信用力やブランド力の強化が期待できます。M&Aを積極的に進めるケースも多く、両者ともに統合後のシナジー、それぞれに期待する役割を描きやすいことも特徴です。
一方で、株主開示やデューデリジェンスなどM&A実行までの意思決定、手続きに時間を要するケースもあります。
未上場企業は国内株式会社の9割以上を占め、企業規模は様々ですが、上場企業と同様の知名度・ブランドを誇る企業も少なくありません。多くの場合、オーナー一族が株式を保有しており、一度話がまとまれば、スムーズかつ柔軟な対応も期待できます。
次に、候補企業が現れた時に、事業規模や業績など基本的な情報のほか、しっかり確認しておくべきポイントについてご紹介します。
譲渡先の目的は何か?
売却先の目標や戦略が、自社のM&Aの目的、ビジョンや事業戦略と合致していることが重要です。
売り手が候補企業を検討する際に、相手が何を目的に買収をしようとしているのか、その先の戦略までしっかり把握できているケースは意外と多くありません。
「事業成長、拡大」という表面的な言葉だけでなく、具体的に自社のどこに魅力を感じて、どのようなシナジーを期待しているか。相手のM&A後のビジョンについて、売り手側も詳しく把握しておく必要があります。
また、過去のM&A実績も参考になります。これまで譲り受けた会社と現在どのようなシナジーを生み出しているのか、自社とM&Aをした場合の予想図が描けるため、必ず把握するようにしましょう。
譲渡先の企業文化・価値観とギャップはないか?
売却先との文化や価値観の一致も重要です。組織文化や取り組み方、人材採用における価値観などが合致しているかを見ておく必要があります。
これらは書類だけでは判断できないため、M&A仲介会社からの情報やトップ面談でのコミュニケーション、相手企業のオフィスや工場など現地を見学することも検討材料として有効です。
「好条件を提示されたが、実際に会ってみて自社の社風と合わないと思いお見送りした」という譲渡オーナーも少なくありません。文化の違いがM&A後の統合を困難にする可能性があるため、M&Aの目的と合わせてここはしっかり確認しておきましょう。
終わりに
以上、譲渡・売却先を探す、選ぶ際のポイントについてご紹介しました。
初期の検討段階から業種、地域など選択肢に固執せず、それぞれのメリットを意識しながら、目的や状況に応じて広く可能性を探ることが満足度の高いM&Aの鍵になります。
そのために欠かせないのが情報収集です。まずは経験・実績豊富なM&A仲介会社などプロフェッショナルに相談することをおすすめします。