[M&A事例]Vol.143 静岡で有名なお弁当チェーン「どんどん」が投資会社の支援を受け取り組む新たな挑戦
東京都で中小企業投資・経営支援事業などを行うunlock.ly(アンロックリー)の三島 徹平社長に、M&Aの経緯とハンズオン支援のポイントを伺いました。
譲渡企業情報
譲受企業情報
※M&A実行当時の情報
国内で「食」を軸に、音楽など他ジャンルのコンテンツと融合させた「総合フードエンターテインメント」イベントの企画・制作・運営を行うAATJ株式会社は、M&Aによって精肉の卸売業を原点にスーパーマーケット業を展開する株式会社ジャパンミート(茨城県小美玉市)に会社を譲渡されました。M&Aを決意された経緯や心境、現在の様子などを、AATJ株式会社 畠山祐聖取締役副会長および遠藤衆代表取締役社長、株式会社ジャパンミート 境弘治取締役会長に伺いました。
事業を理解してくれる先は、必ずしも同業種だけではない
AATJ 畠山様: 当初は、IPOをするつもりで、「頑張ればあと1年」という段階まで業績を積み上げていましたが、「興行を中心としたエンターテイメント事業のIPOは事例が少なく、日本では難しい」という話を聞き、M&Aを決断しました。
畠山様: まず、M&A後のイメージについて3つの展開を考えました。
これら3つの展開を想定したうえで、ベストなお相手はどこかを考え、検討していました。
畠山様: お会いする前は、我々のエンターテイメントの考えを理解してもらえるのだろうか、という点が非常に不安でした。そこでビジネスを説明するにあたっては、「業界用語を使わない」ことを意識し、写真や映像など具体的なイメージを使うことで「楽しい」という雰囲気を感じてもらうことに重点を置いて準備を整えました。
そして、初めてお会いした当日、ジャパンミートの方々は、我々の説明に対して、相槌を打ちながら話を聞いてくださり「これはうまくいくのではないか」と自信が持つことができました。
M&Aで社員に芽生えた「業界のトップ」の誇りと自覚 社員が組織を考える会社に
畠山様: M&Aではスケジュールや価額が合致しただけでなく、私が最も重要視していた、「社内の体制を変えない」ことと、「可能な限りAATJの現メンバーを役員に昇格させてほしい」ということが叶いました。また、社員の給与についても、私から希望を出すことはなかったのですが、ジャパンミートの給与体系に合わせた結果、全体の給与が上がったことには驚きました。社員の雇用環境が向上したという点で上場企業とM&Aをしたメリットを実感していますが、その他にも上場企業ならではのコンプライアンス規範やルールがあることから社員の労務関係への意識が向上したこともメリットに感じています。ベンチャー企業ですから、特に新卒で入社した社員は、ルールという感覚に乏しい面もあったのですが、自ずとルールの必要性に気が付くようになりました。
私が何よりも良かったと感じているのは、社員たちがAATJに対する「自分たちの会社だ」という意識が高まったことです。 いま振り返ってみると、私がオーナーだったころは、いかに自社をブランディングして価値を高めるかということに注力するあまりトップダウンに近いやり方を強いていたと思います。それがM&Aを経てからは、各人が自ら組織をどうするべきかを考える意識が芽生え始め、「会社は自分たちのボートだ」という認識ができてきました。それは、ジャパンミートの境会長がAATJを「業界のトップ」として尊重、経営感覚を社員に伝えてくれたからでもあると感じています。
AATJ 遠藤様: 入社以来AATJの変化をみてきましたが、今回、会社そのものの考え方が変わったと感じました。それは、畠山の話にあったように、M&Aを経て、自分たちは小さい業界ではあるが業界のトップにいるのだという自覚がスタッフや取締役、みんなの中に生まれたからだと思います。
実務面だけでなく、心理面でも親和性を感じられたM&A
畠山様: 私は仕事をする上でレスポンスを重視しているので、お二人のレスポンスが速い点でまず信頼できましたし、リクエストを的確に汲み取ってくれた点や資料や数字に対して手厚くサポート頂けた点で非常に親和性が高かったです。何より、当社のフェスに足繁く通っていただけたことが安心感に繋がりました。実際にフェスの雰囲気を感じて、食べたうえでクライアントに伝えてくれていると思うと、安心できますよね。1年間ほどのお付き合いの間、フェスを開催するたびに社内の人やご家族を連れて来てくれたので、真摯に向き合ってくれているのだなと有難く感じました。
畠山様: これはぜひお伝えしたいことですが、不安から解放されました。全部とは言いませんが半分はなくなりました。経営者として不安がなくなることは良い面と悪い面はありますが、お金に対する不安がなくなったことは良い面だったと思います。 これまでは毎日お財布を覗いては、社員の給与をどうしよう、次の開催で雨が降ったらどうしようと考えていましたからね。ベンチャーを起こされた方なら必ず感じることだと思いますが、「お上がいる」「お父さんがいる」という安心感は、事業を展開していくうえで非常に大きなレバレッジになります。
M&Aで得た安心感を原動力に、次のチャレンジへ
畠山様: これも先に挙げた安心感からきた変化ですが、チャンスをきちんとチャンスととらえられる環境になりました。これまでは資金がなかったために空想で終わらせていたことを検討できるようになったのは、会社にとって大きな転換点になったのではないでしょうか。 安心できたことでチャレンジができるようになり、チャレンジできるようになったことで、発想が前向きになる。結果、新しい展開もついてくると思います。
遠藤様: いま、ジャパンミートとAATJはお互いを尊重し合える、すごく良い関係性を築いています。業界のトップであるというジャパンミートからの期待を理解し、期待に応えるだけではなくより大きな成果として恩返していきたいと思っています。 食のイベントのプロフェッショナルという自覚をもって、ジャパンミートの力を借りながら、日本の肉文化や食イベントの文化を広めて、業界に貢献していきたいと思います。
ジャパンミート 境様: 当社が属する業界は、スーパーマーケット業界であり、淘汰が進み、業界再編が行われると言われ続けている業界です。
具体的な業界再編の動きは、
等であり、特色のない小規模スーパーマーケットは単独では生き残りが難しい環境にある、競争が厳しい業界です。今後もこのような状況が続いていくものと考えております。
境様: 当社は事業基盤拡大の一つの手法として、従来からM&Aを活用してきました。
当社のスーパーマーケットは社名が表すように、精肉部門を創業としており、特に精肉部門に強い、生鮮スーパーマーケットです。店舗全体の生鮮部門売上高比率が50%を超える、特色のあるスーパーマーケットであると思っています。
精肉以外の生鮮各部門はM&Aによる各部門の専門業者をグループ会社化し、その後合併をして運営しています。そのため、当社のスーパーマーケットは各部門がプロ集団という、同業他社には真似できない運営体制であると自負しています。
そのため、今後もAATJのように当社グループの事業発展に寄与すると判断できる企業様とのM&Aについて、前向きに検討していきたいと考えています。
東京都で中小企業投資・経営支援事業などを行うunlock.ly(アンロックリー)の三島 徹平社長に、M&Aの経緯とハンズオン支援のポイントを伺いました。
リネンサプライ業のエスオーシーは、「民間救急」事業のアンビュランスを譲受けました。異業種2社がM&Aに至った背景、PMIについて話を伺いました。
PEファンドのブルパス・キャピタルは、革小物のファブレスメーカーを譲受けました。会社の業績が拡大する現在、M&Aの経緯とPMIのポイントを伺いました
まずは無料で
ご相談ください。
「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。
宮森 (AATJ様 担当)
AATJ様は国内最大級のフードイベント「肉フェス」を運営するベンチャー企業です。畠山社長のアイデアと行動力によって事業が急拡大する中、オーナー企業として成長を続けることに限界を感じておられました。従業員やお客様、取引先様により安心してAATJに関わって頂くため、大手優良企業とのM&Aを決断されました。 「信用」「人材」を必要とするベンチャー企業様と、更なる「成長」を模索する老舗大手企業様との、両社の思いを実現できる良いマッチングであったと感じております。
公認会計士 永川 (AATJ様 担当)
「もう一段上の企業ステージにステップアップするために戦略的な資本提携を活用したい」、AATJ畠山様の熱意はそのまま肉フェス会場での熱気・一体感にも表れ、今後の更なる企業成長の可能性を十分に印象付けるものでした。青年実業家の熱意に真摯に向き合う老舗優良大手のジャパンミート様の姿勢は、対等な精神に基づくM&Aの理想形と理解しています。弊社がその架け橋となれたこと、大変光栄に存じます。
河田 (ジャパンミート様 担当)
ジャパンミート様はスーパーマーケットという厳しい業界の中で順調に業績を伸ばしています。新業態も積極的に検討しており、今回のAATJ様とのお話はその先駆けとなるものでした。異業種同士の組み合わせ乍、商材は近い為親和性は高く、また新たな業態の創造も期待できるよい縁談であったと思っております。 所謂成長戦略型のM&Aであり、両社の前向きな考えは私自身大変勉強になりました。 双方の今後の益々のご発展を祈念しております。