[M&A事例]創業2期目のスタートアップ企業が更なる成長実現のため譲渡。ジャフコグループと共に短期間でIPOを実現

株式会社AVILEN(東京都)× ジャフコグループ株式会社(東京都)

譲渡企業情報

  • 社名:
    株式会社AVILEN(東京都)
  • 事業内容:
    ディープラーニング技術を搭載したAIエンジンの開発・提供、AIの活用に関するコンサルティング支援、AI 人材育成支援、AIメディア事業
  • 売上高:
    約5,470万円(2020年12月期)
    従業員数:
    16名(2020年5月時点)

譲受け企業情報

  • 社名:
    ジャフコグループ株式会社(東京都)
  • 事業内容:
    投資運用業
  • 従業員数:
    159名(連結)(2024年3月末時点)

※M&A実行当時の情報

「データとアルゴリズムで、人類を豊かにする」をパーパスに掲げ、AI 搭載のソフトウェア開発とビルドアップパッケージ(デジタル組織の構築支援)を主軸としたAIソリューションを提供するAVILEN(東京都中央区)は、創業2期目にして成長を加速させるべく、2020年12月に日本を代表するベンチャーキャピタルのジャフコグループ(東京都港区)へのグループインを選択し、わずか2年9カ月でのIPOを実現しました。高橋 光太郎社長に同社の成長戦略をお聞きしました。(取材日:2024年2月8日)

AI人材の育成と企業のAI実装支援で、日本社会を変革したい

――大学院生5人で起業されたそうですが、創業の経緯を教えていただけますか?

譲渡企業 AVILEN 高橋様: 今でこそ世界で大注目のAI技術ですが、創業した2018年当時はまだ世の中に認知される状況にはありませんでした。ただ、日本は全体人口も労働人口も減少の一途を辿っていて、このまま何もイノベーションが起きなければ、私たちの世代が必死に働き続けない限り、全人口を支えきれなくなるのは明らかでしたので、当時大学院で機械学習の研究をしていた創業メンバーの5人は、AIを深く学べば学ぶほど、「AIは仕事を任せられる最強のツールになる」と確信しました。
労働人口が減少しても、AIが働いてくれれば、人間は自由な時間を手にできるようになります。ですが、日本にはAI人材を含めてIT人材がまだまだ圧倒的に不足しています。日本を豊かにするためには、AIを活用できる人材をどんどん増やさなくてはいけないのに、当時AIエンジニアの資格を取得するための講座はなんと100万円もしていました。いくらなんでも高過ぎると感じました。
そんな高額なビジネスモデルを壊して、自分たちの手でより多くの人がAIを学び、活用できる世界を創ろう。そうした想いから仲間との起業を決意しました。IT人材を増やすべく「全人類がわかる統計学」と名づけたメディアは多くの反響があり、私たちの背中を押してくれました。

創業時に掲げたビジョンは、「最新のテクノロジーを、多くの人へ」でした。AI人材の育成とAIを活用したシステム開発の2つを軸に事業をスタートしました。その後、ジャフコへのグループイン、東証グロース市場への上場を経て創業6期目となった今、新たなパーパスを打ち出しつつ、創業時からのビジョン、事業内容ともに変化することなく、ぶれずに初心を貫いているのはAVILENらしさであり強みだと思っています。

――創業2期目にして売上高約2.5億円、営業利益約1.1億円を達成され、さらに、営業利益率は40%を超える高収益ビジネスを展開されていますね。

高橋様: 当社の成長を大きく牽引してきたのは、AI・機械学習等の検定・試験対策講座を提供するAI人材育成事業です。創業当初は会場を借りて対面で講義を行っていましたが、より多くの人に届けられるようにeラーニング形式に変更したことで、受講者の数が大きく伸びていきました。日本ディープラーニング協会認定「E資格」の対策講座では94.4%の高確率を誇り、6期連続で合格者数No.1を達成しています。また、現在では、法人顧客向けのプログラムを導入し、より実務を意識したプログラム内容へと進化させています。

一方で、どれだけ優秀なIT人材を育てても、企業が変わっていかなければ日本社会に大きなパラダイムシフトを起こすことはできません。AI人材育成事業とAI開発事業を両輪で進めていく重要性を強く感じていたので、創業当初からAI開発にも注力しました。
といっても、大学院のメンバーがつくった会社ですから、企業とのパイプなど当然ありませんでした。講座の受講生に話しかけ、仕事上の課題やどういった場面でAIを活用できそうかヒアリングするなど、地道な努力を続けることで企業の開発案件の受注につなげてきました。現在では、AI開発の支援企業は大手企業を中心に780社を超えるまでになっています。

戦略的パートナーとしてジャフコグループに資本参加いただくことを決断

――M&Aを検討し始めたきっかけ、譲渡先としてジャフコグループを選んだ理由は何だったのでしょうか?

高橋様: 成長ステージがいよいよ拡大期の段階へとなったとき、最優先で取り組むべき経営課題として「経営管理体制の強化」「人材採用の強化」「顧客網の拡大」の3つを認識していました。創業メンバーは皆、「0を1にする」ことが得意で、個々にやってみたいことが多くある中、この3つを高度な次元に引き上げるためにはどうすべきかと考えたとき、様々な視点でアライアンス戦略を検討してみようという話になり、日本M&Aセンターに相談しました。
経営課題が解決でき、成長の加速が見込めるパートナー企業との資本提携を視野に検討を始めたところ、ジャフコグループとの出会いがあり、IPOを目指す2段階成長プランを提案いただきました。

創業メンバー5人に共通していたのは、創業時の「最新のテクノロジーを、多くの人へ」というビジョンを大切に、長期的にビジョンを実現できる企業をパートナーに選びたいという想いです。提示された金額での比較であれば、ほかの選択になったと思います。しかし、一企業のAI部門になってしまうのではなく、創業メンバーの1人でもある私が2代目社長となりAVILENはAVILENのまま残したいという想いに全員が賛同してくれて、それを実現できるジャフコグループの提案を受けるという決断に至りました。

――M&A後、社内の反応はいかがでしたか?

高橋様: とくに変化はなかったですね。M&A当時は従業員20名弱ほどでしたが、経営側の私たちは26歳で、従業員の平均年齢も同じくらいでした。上場したときも28~29歳と年齢が若いというのもあって、反応はいたって冷静で、正直あまり実感がなかったのかもしれません。たださすがに、上場のタイミングでは「やったぞ!」くらいには思ってくれたのではないでしょうか。

――M&Aによってどのような効果を実感されましたか?

高橋様: 最もインパクトが大きかったのが、「経営管理体制の強化」です。CFOや管理部長をはじめプロフェッショナルが揃っていて、スタートアップからすると「すごい」の一言。何から何までお世話になり、強固な管理体制を構築することができました。プロフェッショナルの力を借りなければ、2年9カ月という短期間でのIPOを実現することは間違いなくできなかったはずです。
「人材採用」の面でも、ジャフコのブランド力は絶大でした。AVILENが人材を募集しても、当然ベンチャーに興味を持っている人にしか届かないところを、「ジャフコグループの〇〇ポジション」と出すだけで一気に応募が増えます。これまで採用では苦戦していましたが、幅広い人材の中から優秀な社員を採用できるようになりました。
さらに、営業面でのバックアップも新規案件の獲得につながった例が数多くあり、「顧客網の拡大」の成果も着実に出てきています。

次は、組織力強化(規模の拡大)で創業時から貫くビジョンの実現を目指す

――今後の経営戦略を教えてください。

高橋様: 最近、「データとアルゴリズムで、人類を豊かにする」という新たなパーパスを掲げましたが、「最新のテクノロジーを、多くの人へ」という創業時のビジョン、想いは変わることはありません。
ただ、今の私たちには、大手企業を中心に780社以上のAI開発等に携わったという歴然とした下地があります。ここからは、創業以来のビジョンをより具体化していくため、本当の意味でデータとアルゴリズムによって大手企業が行っている仕事を効率化し、大きな変革を起こすことにコミットしていくステージだと考えています。
中期経営計画では「M&Aによる組織力・規模の拡大」を掲げ、AVILENと同業の「データサイエンス系企業」と、AIを組み合わせることで大きなバリューアップが期待できる「データを保有している企業」の2領域においてM&Aを進めながら、日本社会全体により大きなインパクトを与える企業を目指します。

――M&Aを検討しているスタートアップ企業に向けてメッセージをお願いします。

高橋様: AVILENがジャフコグループとのパートナーシップを選択したのは、ビジョンをより早く実現するためであり、結果、想定した通りの速いスピードで現在のステージに立つことができました。「時間を買う」という意味で正しい選択だったと思っていますし、逆にここからが本番。データとアルゴリズムでビジネスに変革をもたらし、本気で日本社会を、人類を豊かにするべく邁進していきます。ただ、成長に向けてどのように階段を上っていくか、その方法には様々な選択肢がありますよね。当社のように、効率を求めて時間を買う以外にも道はあります。
結局は、経営者として何をしたいか、何を手にしたいのかだと思います。大切なのは、経営者自身のビジョンや目的を、いま一度明確にすること。その上で、M&Aというのは一つの武器であることは間違いないので、有効に使っていけばよいのではないでしょうか。

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