[M&A事例]Vol.148 会社を成長させるため譲渡を決断。社長を継続し経営パートナーを得る
東北鈴木の2代目社長は、事業拡大を目指すものの方向性に悩んでいました。解決する手段の選択肢としてM&Aを考え、2024年3月に県外の会社に譲渡を行いました。
譲渡企業情報
譲受企業情報
※M&A実行当時の情報
当社がお手伝いしてM&Aを実行された株式会社セントラルビルサービスの吉田潤司会長・敦子副会長ご夫妻に、M&Aを決意された経緯や心境、現在の様子などをお聞きしました。セントラルビルサービス様は、2014年3月、コムシスホールディングス株式会社(東証一部上場)傘下の株式会社つうけん(札幌市)グループに入られました。
吉田様: セントラルビルサービスは、1973年に設立し、現在は釧路市や札幌市の金融機関や官公庁を中心にビルメンテナンス業、警備業を手掛けています。夫婦二人三脚で事業の拡大・多角化を進めてまいりました。
業績は堅調に推移しておりましたが、自分の子供2人は医師の道に進み、家業を継ぐ意向がありませんでした。親戚中を探したり、社員に継がせることを検討したりしましたが、経営者に成りうる人、そしてそれを了承してくれる人は見つかりませんでした。そのうえ当社のマーケットは地方都市で、創業時よりずっと経営環境は厳しくなっています。誰かに「社長をやれ」というのも酷な話だとは思っていました。
そんなある日、日本M&Aセンターのダイレクトメールが当社に届きました。この時期は、証券会社や他のビルメンテナンス会社からも事業承継の打診がたくさんあり、他社の話も聞いたのですが、担当者との相性が合わないのか本気になれませんでした。「せっかくなのでM&Aセンターの札幌のセミナーを聞きに行こう」と思ったのですが、都合が合わず「資料がほしい」と問い合わせたところ、札幌営業所の木島さんと会うことになりました。
木島さんとは、最初に会って話して“馬が合う”のを感じました。木島さんの紹介で、札幌で実際に会社を売った社長にも話を伺うこともできて、「M&Aはいいよ」と明るく話してくれ、成功のポイントも聞くことができました。
ただ、M&Aを15年ほど前から意識し準備をしてきた私でも、実際に「売る決断をする」段階になるとなかなか決心できませんでした。顧問税理士に相談したところ、「売るのはもったいない」と反対されましたが、「じゃあどうしたら良いか?」と聞いても明確な答えは返ってきませんでした。 木島さんと初めて会ってから半年経ったころ、何度もご相談させていただいて自分の中のさまざまな疑問が解消されていったことや、70歳で社長交代するところから逆算すると動き出す時期は今だと思ったこと、日本M&Aセンター分林会長の本に「早ければ早いほど、良い相手に出会う可能性が高まる」と書いてあったことから、木島さんに正式にM&A仲介をお願いすることにしました。相手企業への希望としては、社名、社員の雇用、今までの取引先をそのまま引き継いでくれることと、できれば同業じゃない方が良いと伝えました。すると選びきれないほど多くの相手候補のリストが出てきました。ほどなく、札幌市内の不動産会社が具体的に検討したいということで、お会いしました。交渉はトントン拍子に進み、株式譲渡契約というところまできました。
吉田敦子様: 私は「40年やってきたのに売るなんてもったいない」という気持ちが強く、いよいよM&Aの契約という段階になっても、どうしても100%賛同できませんでした。あまりにも交渉が早く進んだため心の準備ができておりませんでしたし、「釧路という狭い町で社長・専務として40年やってきたのに、ここで会社を手放したら誰も私たちを見向きもしなくなるのではないか」という不安が払拭できませんでした。
吉田様: このとき、家内がこんなに悩んでいる状態でM&Aをしても上手くいかないと思いました。2人で話しあった末、買い手の会社には本当に申し訳ないですが、契約を中止することに決めました。木島さんに事情を話し、買い手企業には何とか了承いただきました。
吉田様: 「まさか上場企業がうちの会社に興味を持ってくれるわけがない」と思ったので、実際に面談をすることになり驚きました。つうけんさんは札証に上場していた北海道で大変有名な会社ですから、面談の際には緊張しましたが、我々に礼を尽くして対応してくれて大変感激しました。
吉田敦子様: 前回のM&Aが中止になり、私が反対したことでせっかくのチャンスをダメにしてしまったという思いがあったのと、その不安を吹き飛ばすぐらいの素晴らしいお相手であったことで、今回はうまくいってほしいと言う思いになっていました。「3年後に同じ相手が声かけてくれるかどうかはわからない」「いずれ売るなら、素晴らしい相手がいる今ではないか?」と考えることができ、契約前夜、前回と違って不安なく眠ることができました。
吉田様: 社員は突然の発表に驚いていましたが、以前から社員の間でも会社の将来について不安を感じていたようで、大手のグループに入ることで 「思いっきりやれるからありがたい!」 と積極的に受け止める社員もいました。
主だった取引先は私と副会長であいさつに行き、全ての取引先が了承してくれました。「社員がたくさんいるのに、どうして売ったのか?」という質問を多く受けましたが、自社株買い取りの問題などにより社員が引き継ぐことは難しいと話したら、「確かにいい選択をした」と分かってもらえました。資本金が1千万円だから1千万円で株式を買えると思っている人もいるようでしたが、実際は数億円必要になりますし、そのような金額を幹部社員が銀行から借りることは不可能です。この点は、世間ではまだ気づいていない社長が多いようです。
私自身は、自分が「社長」と呼ばれなくなった時に会社を売ったことを実感しました。今後は、いかに自分の色を薄め、新社長や社員に引き継いでいくか、というのが一番大きなテーマだと思っています。つうけんさんから来た新しい社長はとてもいい社長で、“大会社から来た”という雰囲気は全くなく、年齢がベテラン社員と近いこともあり、違和感なくスムーズに会社に馴染んでいただきました。社員のやる気が出るような組織変更や目標設定の制度を作り、精力的に動いていただいていますし、早速苫小牧と北見、北海道内2か所に新しい営業所を出すこともできました。2015年の3月には、新しいつうけんさんの釧路事務所に本社を移転し、心機一転社員一同頑張っています。新社長には一生懸命がんばって頂いていますので、少しでも力になっていきたいと思います。
吉田様: 会社を譲渡する場合も、譲り受ける場合も、仲介のプロと一緒にやるべきだと思います。仲介者を通すことで、相手に直接聞きにくいことを聞いてくれますし、秘密保持を徹底してくれたので一切漏れずにM&Aができました。時々冗談で木島さんに「今、釧路でどんな案件があるの?」と聞いても、一切教えてくれません。親しくなった今でもしっかり秘密を守っている姿勢はプロだと感じます。
吉田敦子様: 私が感じたのは、最初に譲渡企業のことを徹底調査して、当社のことをしっかり理解して買い手に提案してくれるので、こちらとしても、提案を受ける方にとっても安心だと思います。また、M&Aセンターは買いたい企業のニーズを豊富に持っているので、最初に持ってきたリストを見て驚きました。沢山の候補から選べるので、自社に一番合った相手を見つけられます。
吉田敦子様: まず、夫婦2人でしっかり話し合い、事業承継を人生設計の中に組み込んでおけばよかったと思います。夫に協力するようになって40年。清掃業務だけではなく経理や総務、最初は自分達で全部やっていました。会社だけじゃなく、家事や育児もしながら必死で会社のために働いてきました。「それなのに会社を売ったら、その苦労の積み重ねがゼロになってしまう。私の人生を返して!」と思うぐらいの気持ちがありました。今日来られている皆さんも“自分の会社を売るのはもったいない”と思っている方が多いと思います。M&Aをして思うことは、“もったいないからこそ、会社を存続させる必要がある”ということです。
吉田様: 新社長のもと社員一丸となって、セントラルビルサービスは新たな成長を始めています。「社員」「会社」「子供たち」「私たち」全員が幸せになるM&Aになりました。素晴らしいお相手を見つけて頂き最後までサポート頂いた木島さん、つうけんさんに引きあわせてくれた皆己さんをはじめ、M&Aセンターの皆様に感謝を申し上げます。
M&A成功インタビューは、 日本M&Aセンター広報誌「M&A vol.40」にも掲載されています。
東北鈴木の2代目社長は、事業拡大を目指すものの方向性に悩んでいました。解決する手段の選択肢としてM&Aを考え、2024年3月に県外の会社に譲渡を行いました。
沖縄県で防水工事業を手がけるヤマト防水工業は、10年後の譲渡を見据え準備を始めたところ、想定より早くにお相手が見つかりました。その経緯やM&A後について伺いました。
北海道全域で道路の舗装工事を行う道路建設は、当初掲げていた条件とは異なる企業を譲り受けます。M&Aから1年たった今、決断の背景と現在の状況を伺いました。
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「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。
吉田会長ご夫妻とお会いしてからのこの2年半は非常に中身が濃かったと思います。ご相談から順調に進んだが紆余曲折があり破談、再開、コムシスグループ様との出会い、成約!と私にとりましても非常に勉強させて頂けた事案となりました。これからも”北海道の切り札!”としてお付き合いさせていただきたいと思っております。
企業戦略部 上席課長 皆己 秀樹 (コムシスグループ様 担当)
【コムシスグループのM&A戦略~隣接分野への進出にM&Aを活用~】 コムシスホールディングス様は、連結売上高約3,200億円、連結従業員約1万人を抱える日本最大の電気通信工事会社です。東京オリンピックに向けた各種インフラ工事等により、中期的には安定した事業基盤が確保されていますが、長期的な課題として電気通信工事業と親和性の高い隣接分野の拡大を掲げ、約450億円の自社株を活用して積極的にM&Aを行っています。つうけん様については、エリア拡大のため、2010年に株式交換により資本提携を行いました。今回は、隣接業種であるビルメンテナンス、警備事業全般のノウハウを獲得するため、つうけんグループを通じ、株式交換によってセントラルビルサービス様を子会社化されました。