[M&A事例]Vol.148 会社を成長させるため譲渡を決断。社長を継続し経営パートナーを得る
東北鈴木の2代目社長は、事業拡大を目指すものの方向性に悩んでいました。解決する手段の選択肢としてM&Aを考え、2024年3月に県外の会社に譲渡を行いました。
譲受け企業情報
株式会社電材ホールディングスは北海道室蘭市に本社を置く国内2位のクレーン会社です。2015年の設立以来、全国展開を推し進め、売上げ150億円(2022年3月期)にまで成長してきました。その原動力となったのが「海外」「M&A」「風力発電」です。同社の成長戦略について上村浩貴専務にお聞きしました。
2020年にシンガポールにあるHuationg Holdings Pte. Ltd.(以下、ホアチョン)を譲受けしましたが、これまでも成長戦略としてM&Aに積極的に取り組まれていますね。
譲受け企業 株式会社電材ホールディングス 上村様: 電材ホールディングス(以下、電材)はこれまで、エリア戦略を重視してM&Aを戦略的に取り入れてきました。 クレーン業界は中小企業が多く、クレーンへの多額の設備投資や人材が重要になるため、M&Aで規模を拡大することのメリットが非常に大きいんです。国内の異地域・同業種のクレーン会社と提携して各社が保有するクレーンや人材をシェアすることで、コストダウンや生産性を高めてきました。
海外市場への進出も積極的ですね。
上村様: 近年、当社では風力発電所の建設に力を入れています。脱炭素の流れで世界的に発電所の建設ラッシュが起きています。そこで、2019年にまず進出したのが台湾でした。アジア太平洋地域では台湾がいち早く大規模洋上風力発電の開発を進めていたからです。おかげさまで台湾に設立した子会社は、2020年には16億円の売上げを計上しました。 今後、台湾以外でも風力発電の開発が進むことを考えると、人材や機材の確保が急務だと思い、海外事業拡大の足掛かりになる同業のパートナーを探していました。
そこで日本M&Aセンターがご支援することになり、マッチングさせていただいたのがホアチョンでした。どんなところに魅力を感じましたか。
上村様: 当社ではこれまでに何社も譲受けしてきましたが、相手企業を決める上で大切にしているのは、シナジーをしっかりと発揮できるかどうかという点です。ホアチョンはシンガポール国内トップ5のクレーン会社で、大手や政府系企業との強固な取引がありました。英語が得意なグローバル人材も500名近くいて、今後の成長戦略の一つに海外展開を置く当社としては、一気に推し進めることができると思いました。
2020年の年明けに本格的な交渉が始まり、あと少しで合意に達するというときにコロナ禍が襲いましたね。
上村様: ええ。ホアチョンも影響を受けて業績が悪化してしまいました。話を進めるか非常に悩みましたが、企業評価や将来性を鑑みて、最終的にM&Aを決めました。当社は2030年までに売上げ350億円を達成するという長期ビジョンを掲げています。ホアチョンとのM&Aは、ビジョン実現を加速させるために欠かせないものでした。
コロナ禍で海外渡航の制限もあった中で交渉を進めるのは不安もおありだったと思います。日本M&Aセンターの対応はいかがでしたか。
上村様: 粘り強く交渉に臨んでもらいました。アドバイザーとして入ってもらうことで、当社の考えを的確にお伝えすることができたと思います。 また、当社グループの成長戦略にとってホアチョンが必要だということも根気強く伝えていただいたので、このM&Aの意義を明確に納得いただけたのではないでしょうか。
2020年12月に最終契約を交わしました。その後、どんな点に配慮されながらPMI(M&A成立後の統合プロセス)に取り組まれましたか。
上村様: 一番重要なのはビジョンの共有です。そのためにも、ホアチョンの従業員たちとリアルなコミュニケーションを頻繁に行っています。その際も、上から目線では上手くいきません。相手をリスペクトする気持ちを持って接することが大切です。 現在は、インドでの子会社設立を進めています。シンガポールにホアチョンという拠点ができたことで、東南アジアだけでなく南アジア地域への進出を加速させる計画です。ゆくゆくはホアチョンを海外子会社を統括するグローバル・ヘッドクォーター(海外本社)とする構想なんです。
国内でのM&Aにも引き続き積極的に取り組まれていますね。
上村様: 2021年5月に青森県八戸でクレーン保有数最大を誇る株式会社川端重機興業を譲り受けました。その後も、鹿島クレーン(2021年・福島)、澤田運輸建設(2022年・兵庫)、イトウ重機工業(2022年・富山)と継続してM&Aを実施しています。
少子高齢化や人口減少などによって、ますます単独で成長できる余地は少なくなってきています。日本企業が成長していくためには、今後もM&Aが必要になるでしょう。 当社も、それぞれの地域で強みを持つクレーン会社と提携することで、スケールメリットを生かした成長戦略を実現させていきたいと思います。
(役職はM&A実行当時)
東北鈴木の2代目社長は、事業拡大を目指すものの方向性に悩んでいました。解決する手段の選択肢としてM&Aを考え、2024年3月に県外の会社に譲渡を行いました。
沖縄県で防水工事業を手がけるヤマト防水工業は、10年後の譲渡を見据え準備を始めたところ、想定より早くにお相手が見つかりました。その経緯やM&A後について伺いました。
北海道全域で道路の舗装工事を行う道路建設は、当初掲げていた条件とは異なる企業を譲り受けます。M&Aから1年たった今、決断の背景と現在の状況を伺いました。
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担当コンサルタント
日本の中堅企業にとって海外展開は自社グループを大きく成長させる可能性を秘めていますが、なかなか単独で進めるには難しい場面があります。今回、電材はM&Aによってシンガポール国内トップ5の会社と提携し、海外展開を一気に加速させています。M&A成功の背景には、「両社間のリスペクト」と「ビジョンの共有」があると感じました。これからの2社のシナジーがますます楽しみです。