[M&A事例]Vol.131 共にブランドを磨き上げ、さらなる飛躍を目指す
猫用生活用品製造の猫壱は、ブランドと人のエンパワーメントに取り組むMOON-Xと統合しました。統合から約半年経った現在、両社代表に伺いました。
譲渡企業情報
譲受け企業情報
※M&A実行当時の情報
敏感肌用化粧品のインターネット通信販売業を展開する株式会社エクラは、2015年の設立以来、順調に業績を伸ばしていたものの、ある「3つの課題」を抱えていました。その課題を解決する手段の一つとして2020年9月に株式会社ユーピーエスとの資本提携を決断。現在も取締役社長として会社の指揮を執る広瀬 拓也様にM&A決断の経緯をお聞きしました。(取材日:2024年1月24日)
――エクラは皮膚科学の研究データに基づいた「しろ彩」などのヒット製品もあり、業績は順調に伸びていました。なぜ、M&Aによる企業譲渡を検討するようになったのでしょうか。
譲渡企業 エクラ 広瀬様: あの当時、当社は端から見れば何の問題もなかったかもしれませんね。その中でM&Aを決意した理由は、ひとことで言うと「事業をより成長させるため」です。順調そうに見えたエクラですが当時は大きな課題を3つ抱えていました。一に資金面、二に商品開発力、三にスタッフ雇用です。
――1つずつ、教えていただいてもよろしいでしょうか。
広瀬様: エクラは2015年創業の新興企業です。M&Aの検討を開始したのは2019年、5年目のことでした。業績好調とはいえ、そこまで資本力があるわけではありません。それでも、敏感肌などの市場でお客さまのお悩みにフォーカスした製品づくりを続けてきました。しかし、化粧品通販は既に成熟市場です。市場の変化も目まぐるしい。ヒット製品を開発してもすぐに後発製品に埋もれてしまいます。特に大手企業の新製品発売時などのプロモーションは凄まじいです。
――新聞やテレビなどのマスメディアだけでなく、店頭やネット、SNSに至るまで同じ製品の広告を見ることもよくあります。
広瀬様:どんなに良い製品を作っても、広告費をかけて露出しなければお客さまに認知されません。先行投資として広告を打ち、売り上げで回収するビジネスモデルです。しかし、この方式では広告費は増える一方。会社の財務への負担が大きくなっていきました。このままでは、いずれ資金繰りに行き詰まるのは明白です。
――資金繰りについては、金融機関から融資を受けるという選択もあります。なぜ、他社との資本提携をお考えになったのでしょうか。
広瀬様:その理由は、2つ目の商品開発力、そして3つ目のスタッフの雇用という課題と結びついています。当社は製品開発に大きく投資してこだわりの製品を作ってきました。しかし広告費込みで、従来の利益を出そうとすると、そのぶん開発費が下がってしまいます。 もし、開発費の削減で製品力が低下してしまうと、スタッフのやりがいを奪うことにも繋がります。
――開発費の削減が、スタッフの方のやりがいに影響するとは、どういうことでしょうか。
広瀬様:私たちは「お客さまの肌を改善へと導く、誠実な商品をつくりたい」という想いで製品を生み出してきました。当社の製品には、臨床データに基づいて、効能が認められた自然の成分が惜しみなく使われています。「誠実な商品」はスタッフたちのモチベーションと顧客満足度の高さにも繋がるものです。もし、広告費のために価格か成分の見直しを考えるようになったら、私たちが培ってきた大事なものを壊してしまうおそれがありました。
――確かに、同じ原材料を使い続けて値上げするか、製品の品質を下げても同じ価格を保持するかは難しい判断です。最近では、食品でもよく問題視されていますね。
広瀬様:仮に資金調達に成功しても、売上アップのためには、より多額の広告費が必要になります。それで当面は凌げたとしても、将来を考えると状況はあまり変わらないように思えました。当社の製品を信頼して入社してきてくれた優秀なスタッフたちの今後にも影響すると考えました。
――融資よりもM&Aに対して、事業継続の将来性を見いだしたということでしょうか。
広瀬様:最も重要なのは、我々が心血を注いで開発した製品と事業の存続です。事業基盤がしっかりしている企業とのM&Aによる提携も視野に入れるべきだと思うようになりました。
――譲渡先企業に経営権を渡すことに対して、不安はありませんでしたか?
広瀬様:もちろん不安はありました。そこで考えたのは、譲渡後も私がマネジメントを継続することです。経営権は譲渡先企業に渡ったとしても、私が会社の舵取りを継続すれば、スタッフも今まで通りの働き方を維持できます。当社の株主に事業譲渡の経験者がいたので、いろいろな方法の比較検討もしました。
――譲渡先企業の選定について重視した点はなんでしょうか。
広瀬様:今回のM&Aの目的に沿っているかどうかです。目的はあくまで会社の存続と商品の長寿化、スタッフの維持。手段として一番有力だったからM&Aを選択したのであり、M&Aありきではありません。この軸をぶらさないことを最重視しました。おかげで、当社の文化だけでなく私の立場も尊重いただける譲渡先を見つけることができたと思っています。
――エクラは2019年12月にM&Aの検討を始め、2020年9月に最終契約を締結しました。そのお考えの変化などはありましたか?
広瀬様:根本の条件に合うM&Aの好機を逃さないためにはスピードも必要だと考えるようになりました。最初は、M&Aをするなら事業継続だけでなくシナジーを重視し、相乗効果も狙いたいと思いました。しかし、欲張ってタイミングを逃したら本末転倒です。軸を決めたら、あとは状況に応じて柔軟な思考を持つことですね。
――決定まで何社とお会いになりましたか。
広瀬様:厳選したこともあり、トップ面談まで至ったのは最終的には2社でした。どちらの会社にするかは、株主全員と協議したうえで決定しました。最初に想定していたよりもスムーズに進められたのは、日本M&Aセンターが間をうまく取り持ってくれたからだと思います。
――当社以外のM&A仲介会社にもご相談をされていたとのことですが、最終的に当社を仲介会社として選んでいただいた理由を教えていただけますか?
広瀬様:M&Aにおいて仲介会社の利用は必須ではないので「良いところがあれば」くらいの気持ちでした。そのため、ニュートラルな視点で他の会社も見ていましたね。日本M&Aセンターを選んだ一番の理由は、担当コンサルタントの岡崎 裕さんです。株主からの信頼も一番高かったので決めました。豊富な経験に裏打ちされた説明がとてもわかりやすかったです。当社のM&Aに対する不安や期待をくみ取り、必要な情報を与えてくれました。そのおかげで、M&Aのメリットだけでなくデメリットもきちんと把握したうえで納得して進められたと思います。成約を急がせるようなこともせず、こちらの気持ちとタイミングを尊重してくれたのも嬉しかったですね。
――仲介手数料についてはどのようにお感じになりましたか?
広瀬様:正直なところ、料金は他社のほうが安かったのですが、日本M&Aセンターにお任せして良かったと思っています。手数料で勝負してこられた会社は、やはりそれなりの印象でした。企業譲渡は、未来を決める重要な賭けでもあります。料金も大事ですが、それ以上に大事なものは「人」だと私は考えます。
――ありがとうございます。PMI(M&A後の統合プロセス)は順調でしたか?
広瀬様:スタッフにとって、株主は普段は見えない存在です。働く場所が一緒で給与体系も変わらず、私も現場にいます。そのため経営権が変わるという実感が薄かったのでしょう。変化による混乱は特にありませんでした。
――M&Aを考えるタイミングはどのような時だと思われますか?
広瀬様:当社のような資本提携を考える方は多くは中小企業だと思います。私が考える一つのタイミングは「3年後は見通せても10年後はわからない時」です。いま「一寸先は闇」という気持ちの方も多いのではないでしょうか。コロナ禍で緩和された金融政策が引き締めに転じるなど、事業環境を揺るがしかねない不確定要素がたくさんあります。
――確かに、ここ数年の激動は想定外のことばかりでした。
広瀬様:この状況にあって、3年後がある程度でも見通せるのはすごいことです。足元が伸びているわけですから。でも10年後はわからない……じゃあ10年後を見通すためにどうするかと考えた時、M&Aはひとつの有効な手段になると思います。当社は比較的余裕がある段階でM&Aを検討したからこそ、望む条件で事業を継続できる形の提携が叶いました。融資と悩んで決めたM&Aですが、結果的にその判断は正しかったと思っています。実際にM&Aから約3年半経った現在も売上目標を毎年達成できていますから。今はまだ大丈夫、でも将来は不安。そんな迷いがあるなら相談だけでもされたほうが良いのではないかと思います。
猫用生活用品製造の猫壱は、ブランドと人のエンパワーメントに取り組むMOON-Xと統合しました。統合から約半年経った現在、両社代表に伺いました。
塗料販売を展開する榊原の3代目社長は、同社の考えに賛同する企業をM&Aでグループインし、業界の変革を目指す同社に直近のM&Aについて話を伺いました。
総合リサイクル事業を行うグループの新英金属は、関東進出の足がかりとして鉄スクラップ商社を譲受けました。同社代表にM&A 戦略を伺いました。
まずは無料で
ご相談ください。
「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。