[M&A事例]Vol.147 M&Aで10社を束ねるグループ企業に。成長の原点となったのは1社目のPMI
菓子・珍味の製造販売を行う譲受け企業はM&Aで成長を加速させ海外進出も果たしました。成長にドライブをかける原点となった1社目のPMI成功について伺いました。
譲受企業情報
※M&A実行当時の情報
当社がお手伝いして2件のM&Aを実行された株式会社ヒガシマル(福証2058)代表取締役社長 東 紘一郎様に、M&Aによる成長を選択した最初のきっかけや、M&A後の効果、譲受ける際に気を付けていること、今後の戦略などをお伺いしました。
東様: ヒガシマルは、先代である私の父が1947年に鹿児島県日置市で創業しました。父は、90歳近い現在も元気に会長を務めています。そんな父から会社を継ぎ社長に就任してから、家族と社員を引っ張り経営者として成長するため、あらゆる研修会に数多く参加しました。
1985年、私が30代の頃「健康ブームがやってくる」と考え、健康志向の食品会社として成功するためコンサルティングを依頼しました。そのときコンサルタントに「成長を望むならM&A」と言われたことが、本格的にM&Aについて検討するきっかけとなりました。
相対取引M&Aで簿外負債が発覚仲介会社の事前調査は重要
東様: 1991年です。最初のM&Aは食品販売会社を相対取引で実行しました。これは失敗で、M&A後に簿外負債が発覚したのです。送り込んだ経営者は元オーナーとケンカしてやめてしまい、売上は半分まで落ち込み、非常に苦労しました。しかも会長(父)はどちらかというと「成功しかない」という考えでしたから、失敗しては本社にも帰れません。必死に立て直しをはかり結果を出し始めると、ようやく会長にもM&Aの有効性を徐々にわかってもらえるようになりました。この経験から、M&Aは相対でやってはいけないと痛感しました。
「M&A経験が足りない」ことを理由に譲渡企業から選んでもらえず
東様: 福岡証券取引所への上場などがあり少し期間があいて、2009年、ある銀行からの紹介で検討した会社がありました。ビット形式、いわゆる入札案件で、1年かけて検討し価格を出しました。今でもそうですが、お相手の会社に金額をつけるというのは非常に難しい作業です。
しかしこの件は、残念ながら2つの理由から実行に至りませんでした。1つ目は、相手からM&Aの経験が足りないといわれてしまったこと。当社の方が他社より高い価格を提示していたらしいのですが、今後を託す会社としては経験不足と映ったようです。M&Aは高い価格を提示すれば即叶うものではないのです。
2つ目は当社のメインバンクから反対を受けたこと。M&Aは、周囲の理解や協力がないと難しいですね。現在もその会社は順調に成長していて、M&Aを実現できていたら…との思いで残念でなりません。
日本M&Aセンターのセミナーに参加後2件のM&Aを実行
東様: 前述の入札や、実行には至らなくてもM&Aの情報交換を銀行(メガバンク)とやりとりする中で、M&Aを本格的に検討したいならやはり専門家に相談した方がいいということで、日本M&Aセンターを紹介してもらいました。まずはM&Aセンターが主催しているセミナーに参加してみようと思い、情報がたくさん集まっているのではと、わざわざ東京会場を選んで参加したのを覚えています。そこで、日本M&Aセンターの竹内さんとお会いしました。
東様: はい。最初がコスモ食品という横浜の食品製造会社です。ヒガシマルの乾麺事業は原材料のコストアップと価格競争の真っ只中で、何かこだわりの、特徴ある商品を作っている会社を探していました。コスモ食品はカレールーやジャムなどをオーガニック素材にこだわって作っている高級食材の会社です。コスモ食品の創業オーナーは、子供のころに市販のカレールーを使ったカレーを食べてお腹をこわした経験から、誰が食べても大丈夫なカレールーを作りたいという想いを原点に、自然派への追求を守って商品開発してきた会社です。しかし後継者問題を抱えていて、日本M&Aセンターからご紹介がありました。M&A後、1年間の引き継ぎを終えてオーナーは引退されました。
この時の最終調印式の様子はカンブリア宮殿でも放映されて(2012年8月9日)、非常に反響が大きかったです。
その後にご紹介を受けた2社目が大阪の向井珍味堂です。向井珍味堂はきなこなどを使った珍しい、おいしいものを作るということをコンセプトに経営していました。社長以下非常にマジメな社員の方たちばかりで、大阪進出の足がかりとして検討し、2012年に成約しました。
今では、コスモ食品の商品も向井珍味堂の商品もヒガシマル本社に展示し、お互いの販路拡大や原材料コストの管理などで協力しています。
前述のとおり相対取引のM&Aでは痛い目にもあいましたが、日本M&Aセンターの仲介を受けるようになってからは、センターの事前調査で対象会社の財務内容などすべての情報が整理され、税理士や公認会計士のチェックが入った正式な「M&A案件情報」として提供してもらえるので、安心して検討できています。
「子会社の役員になってマネジメントを学びたい」と、社員の意識が変わってきた
東様: 事業上のシナジーはもちろんですが、人材育成についてよい影響が出ています。最近では、M&Aを実行するとヒガシマル社内で「次は誰が役員として派遣されるのか?」という期待の混じった雰囲気が漂います。社員の中でも、「子会社の役員になってマネジメントを学びたい」という意識が高まってきているように思います。子会社のマネジメントを経験させることで、将来の役員候補を育てることにもつながっています。人が育つということは非常に大きなメリットだと思います。
M&Aの譲受け先として浸透し、案件の紹介件数が増加
東様: 最近は当社自身のM&A実績も増えてきて、M&Aの譲り受け先として浸透してきたのか、様々な機関からご紹介を受けることが多くなりました。当社としては本業とシナジーがあるところなら、金額が高くても積極的に検討する姿勢でいます。具体的には食品製造になりますね。しかしM&Aはタイミングがありますから、お互いに事業シナジーとともにタイミングが合致したときに、スムーズなM&Aが実現できるのだと思います。
M&A後、対象会社の給与体系を最低2年は変えない
東様: M&A後は、対象会社の体制を急に変えてしまおうとしないことです。特に給与体系などの待遇面では、当社では最低2年間は一切変更しません。急に変えてしまうとやはり反発のもとになってしまいます。
またM&Aは利害関係者が非常に多く、全員がメリットを享受できるようにしなければなりませんので、何が何でも自分の意見を突き通そうという姿勢では難しいと思います。そういう意味では、経営者は「自利、利他」の心でM&Aを行うことがベストかもしれません。
今後は関東・関西の強化、海外再進出
東様: 今後は関東や関西の強化はもちろん、特に海外への展開を積極的に考えています。7~8年前、単独でベトナムに工場進出したことがありましたが、うまくいかずに撤退を余儀なくされました。M&Aを通じて、もう一度海外への進出にチャレンジできたらと思っています。
5年後には、売上200億円、経常利益率10%を達成できるよう、グループ全体をあげて目標に向かって邁進していきたいと考えているところです。
M&A成功インタビューは、 日本M&Aセンター広報誌「NEXT vol.1 創刊号」にも掲載されています。
菓子・珍味の製造販売を行う譲受け企業はM&Aで成長を加速させ海外進出も果たしました。成長にドライブをかける原点となった1社目のPMI成功について伺いました。
ジェネリック医薬品の卸売業を営む八戸東和薬品は、異業種のきちみ製麺を譲受けました。約2年経った現在話を伺いました。
120年以上温麺の製造を行う「きちみ製麺」が譲渡先に選んだのは、ジェネリック医薬品の卸売業の会社でした。成約から約2年経った現在について伺いました。
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