[M&A事例]Vol.140 医薬品×食品、異色のM&A。120年以上の歴史にカイゼンの風を吹き込む
ジェネリック医薬品の卸売業を営む八戸東和薬品は、異業種のきちみ製麺を譲受けました。約2年経った現在話を伺いました。
譲渡企業情報
譲受企業情報
※M&A実行当時の情報
当社がお手伝いをして2019年にM&Aを実行された株式会社平松薬局 平松修治前代表にM&Aを決意された経緯や心境、現在の様子などをお聞きしました。
平松様: 大学薬学部卒業後から長年、地元・沼津市の薬剤師会に勤務し市内の薬局に勤めてきた傍ら、様々な薬局や行政との調整役を行ってきました。 そんな私に薬局開業の話が来たのが2011年のことです。病院がリフォームにあたり、院内処方から院外処方への転換を行うため、薬局開業の打診がきたんです。その病院は明治時代から続く病院で、地域医療の根幹でした。門前薬局として、同じように地域医療を支えていきたいという思いから、平松薬局の開業に至りました。
経営して感じた、理想の薬局への厳しい道
平松様: 薬剤師会に勤めている時から、患者さんにとって理想的な薬局の在り方について考えてきました。平松薬局の開業においては、自分にとっての一つの理想の形である“患者の希望に沿える薬局”を目指しました。門前のクリニックで診療を受けた患者さんが多くやってきますが、在宅診療に対応した居宅療養管理指導も行いたいと思ってきましたし、もっといろんな患者さんに対応したサービスを提供したいと思っていました。 しかし実際は、薬剤師不足や卸との交渉の難しさなど、個人経営としての限界を感じる結果となりました。患者さんの希望に沿うためには、もっとサービスを拡充しないといけない。サービス拡充のためには、人手が足りない。薬剤師を募集しても、なかなか沼津で勤務できる人材はいない。理想とする薬局像までに全く自分たちの力で辿り着けない現実だけは、骨身にしみて感じていました。
地域医療をサポートしたい思いと裏腹に、年齢的にも感じた厳しさ
平松様: 私には4人子供がいますが、全員薬学部に進学しなかったので、親族に継がせる選択肢はなく、従業員も数名でしたから、第三者への承継しか道はありませんでした。 地域医療のためには、決して薬局を閉店させてはいけないという信念でしたから、自分で頑張れるうちは平松薬局を続けていきたいと思っていました。しかし、自分の年齢が60歳を超えてくると、だんだんと経営や勤務における年齢的な厳しさも感じるようになりました。「地域医療のために自分が頑張らなければ」という想いに体力が追い付かないのです。限界が見えてきた、と言いますでしょうか。 一方で、「本当の限界が来る前に引き継ぎ手を探したい」と思っていた面もあります。事業承継には時間がかかりますから、自分が本当に限界を迎えてからでは満足な承継ができません。そういった意味でも、今のうちから引き継ぎ手を探そうと思い、三菱UFJ銀行の支店長に相談していました。
早い相談が、早い引き合わせにつながった
平松様: M&Aの相談をした時には、そんなに大きな薬局ではないし、沼津という地域柄、そんなすぐに買い手が見つかると思っていませんでした。しかし、日本M&Aセンターさんの全国ネットワークから、思っていたよりずっと早く今回のお相手であるルナ調剤様を紹介いただけたのは本当にありがたかったです。 自分が管理薬剤師もしていましたから、そういった人材の面でも難しいのではと不安に思っていた部分がありましたが、あっという間に沼津出身の管理薬剤師がいるお相手を探し出していただきました。早い相談が早い引き合わせにつながるんだと、驚きとともに安心しましたね。
平松様: 東北から九州まで全国に複数店舗を運営しているという基盤に安心感をもちましたし、M&A後もこれまでの薬局の文化を重んじてくださるという方針は平松薬局にぴったりのお相手だと思いました。 実際に、店舗運営にやる気のある薬剤師の方を派遣いただき、今は引継ぎも無事に終えて、平松薬局の次の時代が幕あけています。
薬局事業をきっちり引き継げることは、地域医療をサポートすること
平松様: 開業からこれまで、まとまった休みもなく駆け抜けてきましたから、今は孫の面倒をみるなど、家族の時間を満喫しています。特に妻には、開業当初から私をサポートしてくれて、長期の休暇もとれないような生活をさせてきたので、ゆっくりしてもらいたいですね。 “地域医療をサポートしたい”という思いは私の仕事人生の根底にありますが、M&Aを体験して、必ずしもそれは“薬局を自分の体力がある限り続けること”ではないということがわかりました。大切なのは、地域に薬局が存続し、時代時代に沿って患者さんの求めるサービスを拡充できることです。そのためには、薬局事業をきっちり次世代に引き継ぐことが必要です。 地域医療にとって何が大切かを考えると、M&Aによる事業承継は地域医療のサポートに繋がっていると思います。そういう意味では、最後まで自分の信念に沿って仕事ができたと思っています。私の薬剤師人生を、こうして幕を閉じることができて、今はとても幸せです。
M&A成功インタビューは、 日本M&Aセンター広報誌「M&A vol.56」にも掲載されています。
ジェネリック医薬品の卸売業を営む八戸東和薬品は、異業種のきちみ製麺を譲受けました。約2年経った現在話を伺いました。
80年以上続く薬局を3代目として継いでこられた譲渡オーナー。当初、譲受け側としてセミナーに参加したものの自社の譲渡を決意した背景を伺いました。
後継者不在に加えて調剤薬局業界を取り巻く事業環境、未来を見据えてM&Aを決意された譲渡オーナー。お相手を選定されたポイントを伺いました。
まずは無料で
ご相談ください。
「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。
提携統括事業部 金融法人部 部長代理 シニアディールマネージャー 角井 隆三
本案件は当社が三菱UFJ銀行様と提携後の初成約案件となります。提携関係があったからこそ、平松様の地域医療に対する思いをスムーズに次世代に引き継ぐことができました。提携を活かし、今後も多くの社長様の想いをつないでいきたいと思います。両社の今後ますますのご発展を祈念しております。
業種特化事業部 業界再編部 M&Aアドバイザー 寺田 俊平
M&Aで店舗拡大しながらもこれまでの薬局文化を大切にするルナ調剤様によって、平松様が開業時から大切にされてきた“理想の薬局像”も受け継がれていくことと思います。今回のM&Aが地域医療に貢献したことを担当者として嬉しく思うとともに、今後も一層邁進してまいります。