[M&A事例]Vol.146 10年後を目標に譲渡先を探し始めるも、わずか1年で同じ志をもつ企業と巡り合う
沖縄県で防水工事業を手がけるヤマト防水工業は、10年後の譲渡を見据え準備を始めたところ、想定より早くにお相手が見つかりました。その経緯やM&A後について伺いました。
譲渡企業情報
Huationg Holdings Pte. Ltd.(以下、ホアチョン)はシンガポールで、創業以来30年以上おもにクレーン事業と重量品輸送事業を手掛けてきた会社です。売り上げの6割をクレーン事業が占めていますが、いずれの事業もシンガポール国内トップ5の一角を占めています。シンガポールの建設業界では知名度抜群の同社が、今回、M&Aを決断した理由とは――。
今回、M&Aを決断された背景をお聞かせください。
譲渡企業 Huationg Holdings Pte. Ltd. Mr.Lee: M&Aを決断した理由は「成長戦略」と「事業承継」です。 クレーン事業と重量品輸送事業を展開する当社のサービスは、新規インフラ建設や石油化学プラントメンテナンスの現場でご利用いただいています。ただ、近年の世界的な脱炭素化の流れにより将来的な成長が見通せない状況にあり、新たな経営戦略を必要としていました。 そこで活路を求めたのが海外市場です。これからはシンガポールを拠点にグローバルに事業を展開しようという「成長戦略」を描いていました。
もう一つは「事業承継」の問題です。私は63歳でそろそろ引退を考えていたのですが、後継者がいません。加えて健康不安も抱えていて、日々の業務をだんだんと負担に感じるようになっていました。遅かれ早かれ事業承継の問題が発生するのなら、そのときに慌てて対処するより、今のうちに道筋を立てておこう。この2つの目的を達成するための手段としてたどり着いたのがM&Aだったのです。
相手企業を探すにあたって懸念された点はありましたか。
Mr.Lee: 気がかりだったのは従業員のことです。みんな長く働いてくれている人ばかりで、私も家族同然に接してきました。そんな家庭的な企業文化が、大きな会社が株主になったときにどう変わってしまうだろうかと不安でした。そこで、相手企業の条件を次の3つに決めました。
1、当社のビジネスについてしっかりとした理解があること 2、企業文化を理解いただけて、近しい文化を持っていること 3、従業員の面倒をしっかりと見てくれる安心感があること
その後、日本M&Aセンターから紹介されたのが株式会社電材ホールディングス(以下、電材)です。お会いした時の印象はいかがでしたか。
Mr.Lee: 好印象でした。同じクレーン会社ということもあり、ビジネスについてはしっかり理解いただけていましたし、お互いに創業社長ということで企業文化も近しいものを感じました。 また、電材は風力発電所の建設に注力していて、台湾に大規模な洋上風力発電所の建設工事を受注する子会社を設立していました。当社も電材のもつ顧客チャネルや風力関連の技術力、海外事業管理のノウハウを共有することで、念願だった海外進出を果たし、より会社を成長させることができると期待しました。
本格的にお話を進めることになったのが2020年の年明けでした。
Mr.Lee: ええ。1月には電材の方々が買収監査のためにシンガポールに来てくださいました。ところが、ちょうどそのときにコロナ禍が襲ったのです。 シンガポールでは、多くの建設現場でクラスターが発生するなどして作業中止を余儀なくされました。業績にも影響が出て、M&Aの交渉に悪影響が出るのではと非常にストレスを感じていました。
やっと成約に至ったのは2020年12月でした。成約当日は実感が湧かなかったものの、日が経つにつれて「ああ、これで子どもたち(子どものように接してきた従業員たち)が自分の手を離れたんだ」と寂しさを感じています。 一方で、経営という重責から解放されたという気持ちもあります。電材による運営も順調で、従業員たちが生き生きと働く姿を見ているとビジネスが成長していることを実感でき、嬉しく、安心しています。
どんなところに変化を感じますか。
Mr.Lee: 大きな進展は営業面です。M&A直後の2020年12月末に、念願だった海外インフラ案件での協業がバングラデシュで始まりました。2021年2月にはベトナムで、大規模陸上風力発電所の建設工事を電材と共同で受注しましたし、6月には香港で当社の顧客チャネルを通じて電材のサービスを販売することもできました。電材という良いパートナーに巡り合えたおかげで次々に海外での受注ができ、非常に満足度の高いM&Aになりました。
最後に、会社の譲渡を検討する経営者へメッセージをお願いします。
Mr.Lee: まずは、譲渡すると決めたら中途半端な態度で検討しないことです。途中で気持ちがブレてしまうと信用を失いかねません。そして何より、信頼できる良いパートナーをしっかりと見定めることですね。そういう意味では、M&Aは相手次第であり、良いパートナーにいつ巡り合うかわかりませんから、相手企業探しには十分な時間が必要だということを理解しておく必要がありますね。
沖縄県で防水工事業を手がけるヤマト防水工業は、10年後の譲渡を見据え準備を始めたところ、想定より早くにお相手が見つかりました。その経緯やM&A後について伺いました。
北海道全域で道路の舗装工事を行う道路建設は、当初掲げていた条件とは異なる企業を譲り受けます。M&Aから1年たった今、決断の背景と現在の状況を伺いました。
自前でPMIに取り組む難しさを痛感して日本PMIコンサルティングのPMI支援サービスを利用。ご自身の経験からPMIの難しさと効果について伺いました。
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「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。
Nihon M&A Center Singapore Pte. Ltd. Senior Advisor Wee Koon Heng (Huationg Holdings Pte. Ltd.様担当)
本件では両社がそれぞれに自分たちの目的を達成することができ、非常に満足度の高いものとなりました。 特にホアチョンにとっては、一番の懸念であった従業員のこともしっかり面倒を見てくれるだけでなく、 事業を提携することで更なる発展を望むことができます。本当にいいお相手に巡り合えたと思っています。
Nihon M&A Center Singapore Pte. Ltd. ゼネラルマネージャー 西井 正博 (Huationg Holdings Pte. Ltd.様担当)
両社ともオーナー系企業で文化が近く、お互いのビジネスに対する理解が深いため、最初の面談ですぐに意気投合していらっしゃったのを今でも覚えています。結果として最初の良い印象のまま進みました。日本と東南アジアの懸け橋となる素晴らしい案件になったと感じています。