[M&A事例]Vol.148 会社を成長させるため譲渡を決断。社長を継続し経営パートナーを得る
東北鈴木の2代目社長は、事業拡大を目指すものの方向性に悩んでいました。解決する手段の選択肢としてM&Aを考え、2024年3月に県外の会社に譲渡を行いました。
譲渡企業情報
譲受け企業情報
※イノベックスは、ウェーブロックホールディングス株式会社(東証スタンダード)の子会社です。
プラスチックシートの製造販売を手がけるイノベックス(東京都)は、新たな成長の柱として掲げる「地中熱ビジネス」の推進に向けて、2022年2月に初めてのM&Aを実行しました。同社は、M&A成約前から譲渡企業側の経理体制の早期整備を意識し、成約から1年超にわたって日本PMIコンサルティングがサポートしました。 「自分たちだけではこんなに早く、スムーズな対応はできなかった」と振り返る同社 執行役員 経営企画室管掌 野田 芳明様と、親会社のウェーブロックホールディングス株式会社 経理財務部担当部長 兼 同部 経理課長 牧山 竜一様に、経理体制構築におけるPMI(M&A後の統合プロセス)を進めるうえで特に重視したポイントや、コンサルティングを受けた効果について伺いました。
日本PMIコンサルティングによる主なサポート内容
――今回のM&Aの背景を教えてください。
譲受け企業 イノベックス 野田様: 私たちイノベックスは、ウェーブロックホールディングスの中核会社として、石油由来原料をもとにしたシート及びネットの製造販売を主な事業としています。 昨今、企業活動においてSDGs(持続可能な開発目標)や環境問題へのアクションが求められる中で、新たな柱として環境関連ビジネスの展開を模索していました。そんな中で目を付けたのが再生可能エネルギーである地中熱の活用です。ですが、あくまで当社はメーカーであり、大規模な工事をするには建設業の許可や人材、ノウハウの問題を抱えており、自社単独でビジネスを形にするには時間も労力もかかりすぎると感じていました。 そこで、M&Aで自社に足りないパーツを補完しようと考えました。譲受けにあたって重視したのは、地中熱関連設備工事において必要な許可を有する会社であること、また、許可の維持に必要な専任技術者の資格要件を満たす人材が在籍していることの2点です。日本M&Aセンターからは数十社ご紹介いただいた中で、群馬県の建設業のエイゼンコーポレーション(以下、エイゼン)がこの条件を満たしており、希望立地で財務状況も良好でしたのでご縁をいただきました。
――M&A後の統合プロセス(PMI)についてはいつごろから考え始めましたか。
野田様: エイゼンとのトップ面談を経て、このままうまく進みそうだという確信が持てたので、契約完了の2カ月ほど前から当社グループの関連部署と密に調整を進めていました。 経理面に関していえば、エイゼンは非上場会社で管理体制に大きなギャップがあり、経理担当者がいない状況でした。上場会社グループとして求められるレベルに早く引き上げるには、根本的に変える必要があると認識していました。
譲受け企業 ウェーブロックホールディングス 牧山様: 私は親会社のウェーブロックホールディングスで子会社の経理業務を担っています。経理の人員が限られている中で、エイゼンの業務に専任担当をつけることはできないうえ、イノベックスにとっては今回が初めてのM&Aで社内に知見が蓄積されているわけではありません。加えて、建設業という自社とは異なる業種で特有の論点も存在します。となると、外部のプロの力を頼るしかないという判断でした。
――そこで、日本PMIコンサルティングにご依頼いただいたのですね。
野田様: はい。当社の付き合いのある監査法人や、その他数社も検討をしておりました。そういった状況のなかで、日本M&Aセンターの担当コンサルタントの紹介で、成約前に日本PMIコンサルティングの担当者と一度面談をすることになりました。その際に、私たちの課題に対していつまでに何をすべきかの見通しを示してくれ、価格にも納得感があったのでお願いすることにしました。
――具体的なサポート内容について教えてください。
野田様: 私たちのオーダーは、エイゼンの経理体制を上場企業の子会社の水準まで引き上げること。具体的には、上場会社の基準に即した会計基準の適用、決算早期化対応などです。それに加えて、建設業ならではの複雑な会計処理が必要な「工事進行基準」の新規導入をお願いしました。優先順位をつけ、4つのフェーズに分けて重点施策に取り組んでもらいました。
――日本PMIコンサルティングのサポートを振り返っていかがですか。
牧山様: 例えば決算早期化対応においては、当社グループでは毎月5営業日までに決算を締めているのに対して、エイゼンは完了までに1カ月半ほどかかっている状況でした。背景には経理のために必要な情報を単一管理していなかったり、これまでの慣習で取引先から請求書をタイムリーにいただけなかったりというハードルがあったんです。そこで、日本PMIコンサルティングの担当者が間に入って、まずはエイゼン側の経理に対する意識を高めていただくところからスタート。エイゼン従業員、顧問税理士へ丁寧に説明、調整してくれ、半年ほどで体制を整えてくれました。
――PMIの過程で、印象に残っている出来事はありますか。
野田様: 担当コンサルタントの皆さんを信頼しきっていたので、やり取りや交渉は一任していました。いい意味で私たちが「大きな山場」と感じる局面はなかったですね。それだけスムーズだったということです。 PMIを進める中では、私たちからお願いしなくても必要なタイミングで関係者を集めてミーティングを主催してくれたのがよかったです。その都度、わかりやすい資料も用意してくれて、誰がいつまでに何をするかを明確にしてくれました。 また、東京と群馬と若干距離があるので頻繁に出向くことは難しかったのですが、担当コンサルタントは継続的に週1回以上行ってくれていたようです。第三者として現場の様子や本音をうまく聞き出してくれてすぐにフィードバックをしてくれたので、大きな問題になる前に手を打てました。
――担当コンサルタントの対応はいかがでしたか。
野田様: 皆さん非常に優秀だと思いました。実際に私たちだけでは到底難しくてできないと思っていたことを実現していただいたことがその証明です。経理の知識はもちろん、コミュニケーション能力や調整力などの能力も総合的に高かったです。対応にもスピード感があり、意思決定がしやすくなりました。
牧山様: 特に橋詰さんは、公認会計士で監査法人の出身ということもあり、監査法人がチェックする観点をふまえて資料を準備してくれました。通常業務がありながらの対応ですので、私たちだけでは対応できない部分を先回りしてうまくカバーしてもらいました。
野田様: M&A後に継続して客観的に両社を見てくれている存在がいること自体、とても価値があることです。元々は経理の体制構築ということで依頼をしていましたが、今では経営管理資料や報告体制の構築なども相談させてもらっています。経理だけがうまくいくのが両社のゴールではありませんし、担当コンサルタントが領域を限定せずに両社にとって必要なことをアドバイスしてくれるのでとてもありがたいですね。
――最後に今後の展望を教えてください。
野田様: 日本PMIコンサルティングにも協力してもらったおかげで、早々に社内の体制が整い、ようやく本当の意味でのスタートラインに立てました。M&Aでエイゼンという強い味方を得たので、今後は両社の知見を結集し、地中熱ビジネスに本格的に取り組んでいきたいと考えています。私たちとしても大きな勝負です。会社の新たな柱に成長させていけるよう、尽力していきます。
東北鈴木の2代目社長は、事業拡大を目指すものの方向性に悩んでいました。解決する手段の選択肢としてM&Aを考え、2024年3月に県外の会社に譲渡を行いました。
沖縄県で防水工事業を手がけるヤマト防水工業は、10年後の譲渡を見据え準備を始めたところ、想定より早くにお相手が見つかりました。その経緯やM&A後について伺いました。
北海道全域で道路の舗装工事を行う道路建設は、当初掲げていた条件とは異なる企業を譲り受けます。M&Aから1年たった今、決断の背景と現在の状況を伺いました。
まずは無料で
ご相談ください。
「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。
株式会社日本PMIコンサルティング 橋詰 卓哉 (日本M&Aセンターグループ)
本案件では当事者皆様の「納得」と「安心」を大切にしました。上場企業と非上場企業の会計PMIは求められる業務水準や期限が明確ですが、「あるべき」を推し進めるだけでは混乱や反発を招きます。そこで当事者の皆様が前向きな気持ちで会計PMIに取り組み、それがさらにM&Aのシナジー発現につながることを目指して、ご支援させていただきました。今後の両社のますますのご発展をお祈り申し上げます。