[M&A事例]Vol.143 静岡で有名なお弁当チェーン「どんどん」が投資会社の支援を受け取り組む新たな挑戦
東京都で中小企業投資・経営支援事業などを行うunlock.ly(アンロックリー)の三島 徹平社長に、M&Aの経緯とハンズオン支援のポイントを伺いました。
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※M&A実行当時の情報
「サーチファンド」という仕組みがあります。経営者を目指す個人(サーチャー)が投資家から支援を受けながら企業を探し、そのトップに就任するというものです。サーチャーの大屋貴史氏は、株式会社サーチファンド・ジャパンのM&Aによって、2022年1月に地元・山梨県甲府市の住宅会社ミスターデイク株式会社を事業承継しました。経営者になって約半年、新たなスタートを切った大屋氏の現在を伺いました。
——まず、大屋社長がサーチャーを目指された経緯をお聞かせください。
譲渡企業 ミスターデイク株式会社 大屋様: 企業を少しでも元気づける仕事がしたいと、大学を出て大手広告代理店に入社しました。ところが実際に働いてみると、CMや商品パッケージを変えることで解決できる問題は非常に限られていることに気づいたんです。 そこで企業再建を専門にしている会社に転職しました。企業の課題解決のノウハウを10年学んだのち、それを実践するためにマネジメント会社に移りました。オーナー社長の右腕、いわばナンバー2として依頼された会社に入り経営の立て直しをするのが仕事でした。何社か立て直しに携わらせていただくなかで、今後は自らが経営者になりたいと思うようになりました。どうしたらいいだろうと悩んでいた時にサーチファンドという方法があることを知ったのです。
——経営者を志す人(サーチャー)が、投資家の支援を得て企業を事業承継するというものですね。
大屋様: はい。最初は個人で企業を探していましたが、サーチファンド・ジャパンが設立されたことを知ってサーチャーに応募しました。
——2022年1月に山梨県の住宅・リフォーム会社ミスターデイクの代表取締役社長に就任されました。決め手となったのは、どんな点だったのですか?
大屋様: 私は相手先の会社を探す上で、3つの条件を考えていました。1つ目は地域の経済に貢献できる企業。2つ目は小さな改善を積み重ねていくことで業績を上げられる、ビジネスモデルがしっかりしている企業です。そして3つ目が貢献するのなら、ぜひ故郷の山梨の企業にと思っていました。
ミスターデイクは、この3つの条件がすべて当てはまりました。譲渡企業の親会社・株式会社ネクステージグループのオーナーが地元の人に託したいと考えておられたことも決め手でした。考えてみれば、このような会社に出会えたのも日本M&Aセンターの仲介があったからこそだと思っています。まさに千載一遇のチャンスでした。
——ミスターデイクの会社としての魅力は、どこに感じられましたか?
大屋様: 1つは新築とリフォームの両方を手掛けている会社だったことです。もう1つはOBのお客様がたくさんいらっしゃるということです。そのデータべースを活用して、点検を知らせるハガキを毎年出していました。これは今も続けていますが、ハガキ1枚でお宅に上がれるビジネスは、まずありません。
——社長に就任された時の社員みなさんの反応はどうだったのでしょう?
大屋様: 最初は驚かれた様子だったのですが、すぐにサーチファンドのことも理解していただけました。私が甲府市出身でUターンしてきたこともあって、ありがたいことにそんなに距離は感じなかったですね。ただ、本当の信頼関係ができるようになったのは、つい最近になってからだと思います。
——就任から半年ほどが経ちました。社員の方とどんな関わりをされてきましたか?
大屋様: まず全員と1対1で1時間ほどの面談をしました。その後は、1人ずつ月に1回10〜20分程度の面談を続けています。面談では本人の目標や課題を確認するようにしています。 さらに自分がこの先何をやりたいのか、やろうとしているのかを、熱く語ることも続けています。その最初が就任3カ月目に行った全員参加の経営方針発表会です。
——すぐにではなく?
大屋様: はい。最初から3カ月目と決めていました。方針発表は就任してすぐやると間違いも多いのです。これはマネジメント会社での経験からも言えます。だいたい3カ月あれば社内の実情が掴めます。逆に半年だと長すぎます。会社の方針を示すのは、3カ月がベストなんです。
——どんな方針を発表されたのですか?
大屋様: 先ほども言いましたが、これまでミスターデイクは新築とリフォームの2本柱できました。そこに新しく3本目の柱としてリノベーションにも取り組もう、そしてやがてはこの柱を主軸にしたいと伝えました。リノベーションはトイレやキッチンなど一部分のリフォームとは違います。今ある家の構造は残して大規模な工事を行い、その家に新たな価値をつくり出すのです。リノベーションには新築よりも高い技術力が求められます。ですから、引き受ける工務店も少ないのです。その意味で、将来を見据えて技術力のある工務店とのネットワークを今のうちから築いておこうと考えています。
——社内の変化を何か感じておられますか?
大屋様: 数字に対して敏感になってきたように思います。売り上げはもとより、1人当たりの訪問件数や失注率などですね。この意識がどうすれば注文に結びつけることができるかという努力につながっていけばいいなと思っています。 そのためにも、より顧客データベースを活用していこうと考えています。加えて、お客様のお困り事を深堀りして聞き、信頼関係を築いていける人材の育成も続けていきたいと考えています。この2つが現状での課題といえますね。
——お客様のお困り事を深堀りして聞くとは、どういうことでしょうか。
大屋様: 顧客のお困り事の相談でお宅に伺うことを現地調査、縮めて「現調」と言います。例えば玄関ドアの修理の相談で顧客先を伺ったとします。その時に、ドアの話だけではなくいろいろ話をお聞きしながら他にもお困り事があるかもしれないと探っていくのです。現調では、それが大切なのです。新たなお困り事が明確になれば、それに対する解決策を提案する。そうすることで、当社への信頼は深まるし、仕事の失注率も下がります。
——そうした提案ができるようになるために、どのような育成方法をお考えですか?
大屋様: やはりベテランの社員に同行して、現場でその仕事の仕方を見て学んでもらうことが一番です。時間はかかりますが、これは仕方ないことだと思っています。
——リノベーション以外にも何か今後のビジョンはお考えなのでしょうか。
大屋様: 最近、平屋を建てたいというご相談を多くいただきます。子どもたちが独立して夫婦2人の暮らしになったからとか、子育て世代でも、いつも子どもたちに目が届くようにしたいなどという理由からです。当社も含めて、ハウスメーカーで平屋を得意とするところはそう多くありません。そこで、山梨で最も平屋の得意なハウスメーカーになろうと思っています。
——最後にサーチファンドのメリットについて、お話いただけますか。
大屋様: 今の日本が抱える中小企業の後継者不在問題を解決するうえで、サーチファンドは最も有効な解決策だと思います。私自身、自分が考えていた条件にぴったりの会社と出会うことができました。その意味で、会社を承継した私も良かった。社員の人たちも会社が続くことは喜んでもらえていると思いますし、これからもっと地域経済のために貢献していけるなら、まさに「三方よし」になります。 サーチファンドの良さをもっと多くの人に知っていただく意味でも、頑張って当社を目に見える形で大きく発展させていきたいと思っています。今は3店舗ですが、来年中に2店舗増やし、5年で10店舗にまでしていきたいですね。
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