[M&A事例]M&Aで人手不足と事業承継の課題が一気に解決し、会社の更なる成長に着手することができた

エムエスシー製造株式会社

譲渡企業情報

  • 社名:
    エムエスシー製造株式会社(埼玉県)
  • 事業内容:
    シート材・コイル材切断機の製造販売
  • 売上高:
    約3.9億円
    従業員数:
    18名

譲受企業情報

  • 社名:
    株式会社技術承継機構(東京都)
  • 事業内容:
    中小製造業の譲受け及び譲受け企業の経営支援

※M&A実行当時の情報

埼玉県で製造業を営むエムエスシー製造株式会社は、過去最高売上と最高益を達成した裏で、深刻な人手不足に悩まされていました。このままでは社員や社員の家族を守り切れない。さらに、後継者不在の悩みも抱えている。社長の德勝賢治氏が考え抜き、導き出した答えはM&Aでした。

人が足りない、さすがにもう限界だ

成約式では地元・和歌山の産業に貢献することを誓い合った

譲渡企業 エムエスシー製造株式会社 德勝様:2019年1月の決算で、当社は過去最高売上と最高益を達成します。本当なら手放しで喜んでいいはずなのに、私の気持ちは晴れませんでした。それは、この好業績が社員の残業の上に成り立っていたからです。自分でも何とかしなければとずっと思っていました。でも、どうにもなりません。 原因ははっきりしていました。人が足りない、育たないのです。求人を出しても人が集まらない。たまに採用できてもすぐに辞められてしまう。そうすると、私の考えを理解し同意する現社員に頼るしかなく、結果としてそれが彼らの長時間労働につながってしまうのです。 頭を抱えていると、ついに恐れていた事態が勃発しました。工場長が休日に居眠り運転で事故を起こしてしまったのです。幸い自損事故で、本人にも同乗の家族にもケガはありませんでした。残業時間との因果関係を指定されたわけではないものの、まるっきり関係ないとは言えません。自分のことなら自分で責任をとれば済みますが、社員やその家族の命となったら、そういう訳にはいきません。

かといって、人がいないから納期を1年伸ばしてくれなどと言えば、あっという間に顧客は離れていくでしょう。そうしたら、今度は会社を経営し続けることができなくなります。 人材を確保するために2018年からはベトナム人実習生の受け入れも始めました。さらに、資材調達のために年に何回かはインドネシア、タイ、中国まで行く必要があります。経営資源のうちヒトとモノは、社長である私が一手に担っているのですが、さすがにもう限界だと思いました。 そんな私のところに、1通のダイレクトメールが届きます。それが後に会社の運命を変えることになるとは、そのときは想像もしていませんでした。

2018年からベトナム実習生の受け入れを開始した

2018年からベトナム実習生の受け入れを開始した

事業承継を考えると M&Aしかないのかもしれない

差出人は日本M&Aセンター。社名に見覚えはありません。もちろんM&Aとは何かくらいは知っていましたが、自分とは無関係だとずっと思っていました。 どうせ手あたり次第なのだろうが、一応なぜ自分のところに資料を送ってきたのか確認だけしておこう。軽い気持ちで封筒に名刺が入っていたコンサルタントの太田さんに電話をすると、DMを送ったのは技術力の高い会社だけで、しかも、すでに数社が買収先として当社に関心をもっているといいます。それならばと、一度説明に来てもらうことにしました。 太田さんが持参したリストには、見覚えのあるプレスメーカーや販売会社の社名がずらりと並んでいます。これにはちょっとがっかりしました。なぜなら、M&Aをしてそういう会社と一緒になると、そこと競合する会社のお客さんには売れなくなります。これでは、シナジー効果どころか逆に売り先が狭まって、最後は共倒れです。

そう伝えると、事業承継をする対象は家族、社内、M&Aのどれかだが、家族や社内で可能性はあるのかと質問されました。家族だと妻か3人の娘ですが、妻は社長を継ぐなど絶対に無理だと言っています。娘たちも会社経営にはまったく興味がありません。将来の婿にという可能性もないわけではありませんが、社長ができる素地のある人と結婚してくれるかわからないし、無理に会社を継がせてすぐに投げ出されても困ります。 では、社内はどうか。業務部長、技術部長、製造部長の3人は、いずれも私の考えをよく理解しており、会社を経営する能力も十分あります。けれども、社長を引き受けるとなると、株式を購入するためのまとまったお金が必要だし、金融機関からの借り入れの保証人にもならなければなりません。それでもやるとは言ってくれないでしょう。

もしかしたら私にはM&Aしかないのかもしれない。そこでようやく私はM&Aについて真剣に考えようという気になり、とりあえず太田さんに、当社の一株当たりの売価を算出してもらうことにしました。

この会社ならいま以上に 会社を発展させてくれる

一株当たりの売価は妥当だと思いました。その後も太田さんからは、M&Aの相手先の候補を何社か紹介してもらいましたが、やはり同じシャーリングマシンメーカーや、当社の顧客になっているような会社ばかりで、ここなら安心して会社を任せられるという相手がなかなか出てきません。 そのうち、新型コロナウイルスの流行が始まります。すると、本業で注文のキャンセルや延期が続出し、M&Aどころではなくなって、太田さんにもなかなか連絡ができず、話自体が止まってしまいました。

それが再び動き出したのは、2020年12月。太田さんではなく松井さんという別のコンサルタントが、「エムエスシー製造様にぴったりの相手が見つかりました」と当社を訪れました。そこで紹介してくれたのが株式会社技術承継機構です。日本の中小企業がもつ高水準の技術や技能を次世代に残したいという想いから設立された、中小製造業の譲受けと経営支援を目的とする会社と聞き、たいへん興味をもちました。 それで年が明けるとすぐに先方の担当者と面談をしました。さらに、技術承継機構が過去、実際にM&Aした会社の社員にも、M&A後の状況などを直接うかがって、これなら会社を任せられそうだと確信しました。 当社にとって技術承継機構に会社を売却するのがいちばんいい選択だ。技術承継機構なら、私が苦しんだ人材不足・人材育成問題を解決し、いま以上に会社を発展させてくれる。そう思わせてくれたことが決め手となったのです。

私の腹が決まると、すぐにM&Aの準備が始まります。私の出した条件は、現在33歳で技術部長を務めている増山をいずれは社長にしたい、そのために自分も会社に残り、経営ノウハウを彼に教えたいというものでしたが、それも認めていただきました。つまり、会社の所有と経営を分けたのです。それまで株式は私が95.5%、残りは妻のほか数名が保有していたので、M&Aの1カ月前に会社を譲渡する旨を伝え、その前にこの金額で自分に株式を売ってほしいとお願いすると、これもみな快諾してくれました。

契約を正式に締結したのは2020年7月30日。社員には同8月3日に発表しました。さすがにびっくりしたようでしたが、私が代表として残ると伝えるとみな安心したようで、とくに混乱もありませんでした。8年前に他界した父も、いい決断だときっとほめてくれると思います。父が創業した会社がこれからも残り、事業を継続していくからです。

「今後は私のもっている経営者のノウハウを伝えていく活動をしていきたいと考えています」(德勝氏)

「今後は私のもっている経営者のノウハウを伝えていく活動をしていきたいと考えています」(德勝氏)

これからも経営者として 言うべきことを伝えていく

技術承継機構は私が経営理念に込めた想いや経営戦略等を理解し、最大限尊重してくれました。私も会社の経営への関与を続けるので、会社の将来に対しては明るいビジョンしかありません。技術承継機構のスタッフは高学歴のエリートぞろいなので、中小企業の非常に泥臭い経営に戸惑うことも多いのではないか、無理やり自分たちのセオリーや常識に当てはめようとして社員との軋轢が生じないかといった不安はありましたが、実際一緒になってみると、そのようなことはありませんでした。 万が一そのような事が起きた場合は、私がもう会社の所有者ではないのだからと遠慮せずに、経営者として言うべきことを言っていくつもりです。それが、私が会社に残る意味だと思っています。 なお、2022年1月からは当初の計画の構想に沿って増山を新社長、私を会長とする新体制も発足させました。今後も私、新社長、社員、技術承継機構が力を合わせてエムエスシー製造の永続的発展を目指していきたいです。

日本M&Aセンター担当者コメント

業種特化事業部 業界再編部 チーフマネージャー 製造業界専門グループリーダー 太田 隼平 (エムエスシー製造株式会社様担当)

業種特化事業部 業界再編部 チーフマネージャー 製造業界専門グループリーダー 太田 隼平(エムエスシー製造株式会社様担当)
業種特化事業部 業界再編部 チーフマネージャー 製造業界専門グループリーダー 太田 隼平(エムエスシー製造株式会社様担当)

德勝様と初めてお会いした際は、事業承継について、まず何を準備するべきなのか、まだはっきりイメージされておりませんでした。しかし、早めにご家族と話し合うことが大事であることや、業績が好調なときこそ、より良い相手とM&Aできる可能性が高いことをお話ししたあと、德勝様自身がすぐにアクションを起こされたことが、納得いくお相手に巡り会えた最大の理由かと思います。

金融統括事業部 金融法人部 チーフ 松井 基宏 (株式会社技術承継機構様担当)

金融統括事業部 金融法人部 チーフ 松井 基宏(株式会社技術承継機構様担当)
金融統括事業部 金融法人部 チーフ 松井 基宏(株式会社技術承継機構様担当)

まだ年齢もお若い中で今回の判断をされた背景として、德勝社長がこれまでの経営で大事にしてこられた「人材の育成」という部分があったと認識しております。技術承継グループの中でも、德勝社長の人材育成にかける情熱を最大限に発揮いただくことが楽しみです。

※役職は取材時

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