[M&A事例]Vol.129 深刻なドライバー不足と高齢化で事業継続が困難に。採用力のある会社にグループインしてわずか半年で採用に成功
宮本運輸は、長らく人材不足の課題を抱えていました。事態が深刻化し、採用力のある会社への譲渡を行って半年、採用を含め現状について話を伺いました。
譲渡企業情報
譲受企業情報
※M&A実行当時の情報
利他の心、報恩感謝の文化を柱とする「桃太郎文化」という独自の企業文化の下、その名も「桃太郎便」で有名な株式会社丸和運輸機関は、荷主企業に代わり、効率的でローコストの物流を実現するサードパーティ・ロジスティクス(3PL)事業に1990年代から取り組むなど、物流業界のイノベーターとしても知られています。そしていま、同社は増え続けるEC需要に対応するために、新たなパートナーを求めておりました。 丸和運輸機関は2020年8月、東京・埼玉・茨城に8拠点を持つ日本物流開発株式会社をM&Aで譲受けました。あらためて、丸和運輸機関のM&A戦略を和佐見勝社長に伺いました。
M&Aで重視するのは、相手経営者の考え方と相性
和佐見様: M&Aはわれわれの成長戦略の大きな柱だと考えています。目指す経営目標は、売上高前年比115%、営業利益120%、経常利益125%。企業規模が大きくなると、この目標を達成するのはなかなか大変です。この数値をずっと達成し続けていくためには、より強い企業体力をつけていかなければならない。そこにM&Aの意義を見いだしているのです。
和佐見様: なによりも相手企業の経営者の考え方、そして相性ですね。 私が経営でいちばん大事にしているものは「哲学」と「配分」です。哲学とは、経営理念のこと。配分とは、働いてくれている人たちの給料や賞与、成果配分です。物質的なインセンティブもありますね。例えば何かの資格を取るために学校に通ってもらう、海外研修に行ってもらうというようなことです。そういうチャンスを社員たちに与えたいと思っています。
こうした話を相手の経営者としながら、この人は考え方が同じかどうか、私の考えに関心を持ってくれるかどうかを測っていきます。トップの価値観が合わないと、M&Aをしてもお互いに不幸になりますから。無論シナジー効果があることが大前提ではありますが。
和佐見様: 2つあります。1つは経営者が創業者で、自社の事業を拡大、成長させようと思っている。もしくは2代目、3代目経営者でも、創業者を乗り越えようという勢いのある企業です。 そしてもう1つ重視しているのが運んでいる“モノ”で、メーカーよりも、小売業を中心に取引をしている会社です。わが社もずっと流通小売業をターゲットにやってきました。メーカーの場合、どうしても価格が基準になり、価格競争になりがちです。
しかし私は「価値を提供する」という考えでビジネスをしてきたのです。商品の流通ではモノ自体をA地点からB地点に運ぶのが「運送」です。それに対して、私たちは受注・発注・出荷・在庫管理などといった取引関係を一括して請け負い、荷主企業の「物流」全般を改革してきました。どうすればお客様の利益につながるかと考え、新しい価値の提案をしてきたのです。小売業の場合、そうした提案を聞いてくださり、 求められる流通のあり方を共に協力し形にしていけるからです。
社長の人柄に加え、手薄なエリアに拠点を持っていたことも決め手の1つに
和佐見様: そうです。日本物流開発さんは、さまざまな企業のノベルティや印刷物などを自社で仕分け、梱包して配送するという業務をされていました。加えて、これまで以上にEC需要に対応できる方法を模索され、今後の戦略も立てていらっしゃいました。それに川底孝一郎社長は創業者でしたしね。そういう意味でも私が求めている条件にピッタリでした。
和佐見様: 非常に真面目で誠実な人だという印象を受けました。働く人を大切にしようという気持ちも持っておられました。本当に当社に合ういい方を紹介していただいたと、日本M&Aセンター担当の萩原さんには感謝しています。
和佐見様: いくつかあります。本社に伺って現場を見せていただきました。やはり、われわれにとって現場は命なんです。現場を見れば、その会社がある程度わかります。よく管理されていました。川底社長は現場がわかっている経営者だと思いました。これが一つです。
それと日本物流開発さんが茨城にも拠点を持っていたことです。当社は茨城が手薄でしたから、これは非常にありがたかった。そして、茨城に新しい物流センターを作りたいという構想をお持ちでした。その計画にわが社が参加していくことは、双方にとって大きなメリットになると思いました。
M&A後には、互いに人を派遣し合うことで信頼を深める
和佐見様: お互いの信頼関係をつくることがいちばん大切です。まずは人の交流です。相手企業から当社に社員を派遣してもらい、同様に当社からも派遣する。半年くらい、そういうふうにして人材の交流をしていく。そうしてお互いをよく知っていくなかで信頼を深めています。
それと3年先を目指した中期計画を一緒に作り、互いに相談しながら戦略を練っていきます。「よし、これで行こう」と決めたら、後はダイナミックにスピード感を持ってやり遂げる。そのなかで一体感を持っていけると思っています。
和佐見様: はい。土浦の5000坪の敷地に、建坪2500坪で2階建ての新・物流センターを建設します。周囲と比べても、大きくて立派な物流センターができると期待しています。
これを作るのに30億円ほどかかるということでしたが、M&A当時の日本物流開発さんの売り上げは35億円くらいでした。30億円の投資となると、なかなかリスクだったのですが、当社からも資金協力させていただき、今後の事業拡大の重要拠点として共に取り組んでまいります。
自社だけでなく相手企業も、その社員もハッピーに
和佐見様: 最初にも成長戦略の1つだと言いましたが、わが社は2040年までに1兆円規模の売り上げを達成しようと考えています。客観的に見て丸和運輸機関グループの自力成長では、5,000億円規模が限界です。残りの5,000億円、つまり目標の半分は、M&Aでグループに参加していただいた企業と一緒に作り上げたいと思っています。それくらい大きな柱としてM&Aを考えているのです。
もちろん国内だけではなく海外、特にアジアの市場も視野に入れて構想しています。そこには低温食品物流のノウハウを持っていこうと考えています。低温輸送車で鮮度管理しながら魚や野菜を運ぶ。いま日本の鮮度管理は世界トップレベルですから、この市場を開拓したい。海外のM&Aは日本のそれとはまた違った気をつけるべきことも多いでしょうから、合弁会社を作るということになるかもしれません。
和佐見様: 私が常々考えているのは、働いている人を幸せにしたいということです。十分な賞与や成果配分を出すにしても、やはり会社がある程度の規模にならないと難しい。そういう面からも、これからはM&Aという手法で拡大策を正しく図っていければ、それは大きな力になると思います。
和佐見様: 同業者を買収して自分たちだけがハッピーになるのではなく、相手企業もそこで働く人たちもハッピーになるようにすることです。
川底社長の会社も、例えばM&Aが決まった後に「茨城丸和ロジスティクス」などと社名を変える選択もありました。しかし、私はそうはしたくない。「日本物流開発」という社名には、川底社長の思いがあると思うからです。それは大切に残したい。そういう気持ちから、社名もそのままにしましたし、川底社長にも社長を続けていただいているのです。いわば、M&Aを通して同じ方向に進んでいく“同志的企業”を増やしていきたいと考えているのです。
宮本運輸は、長らく人材不足の課題を抱えていました。事態が深刻化し、採用力のある会社への譲渡を行って半年、採用を含め現状について話を伺いました。
シンガポールで、クレーン事業と重量品輸送事業を手掛けてきたHuationg Holdings Pte Ltd.。同社がM&Aを決断した理由を伺いました。
多彩な低温物流サービスを行うニチレイロジグループ。マレーシアで低温物流事業を手掛ける会社に出資を行った同社に海外戦略をお聞きしました。
まずは無料で
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「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。
ファンド部 萩原 駿也
本件は、丸和運輸機関の和佐見社長のラブコールから始まった戦略的М&Aでした。和佐見社長の強い想い、その想いを真っすぐに受け止められた川底社長のお人柄、そしてお2人と両社の相性から、素晴らしいご縁となりました。益々のご発展・働く皆様のご多幸を心より祈念しております。素敵なご縁を仲介できて大変光栄です。