[M&A事例]国内外で20社を譲り受け、事業成長を加速。M&Aを通じて多様性のある会社に進化

ポールトゥウィンホールディングス株式会社

譲受け企業情報

  • 社名:
    ポールトゥウィンホールディングス株式会社(東京都)
  • 事業内容:
    グループ会社の事業活動の支配・管理及びこれに付帯または関連する業務 (グループの主な事業:サービス・ライフサイクルソリューション事業/国内ソリューション/海外ソリューション/メディア・コンテンツ)
  • 売上高:
    約399億円(2023年3月期)
    従業員数:
    9名(2023年1月時点)、連結従業員数:7,287名(内正社員数2,998名、2023年1月時点)

ポールトゥウィンホールディングスグループは、ゲーム、インターネット、EC、テクノロジーなどの市場におけるビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)事業を中心に、国内外で成長を続けています。2029年1月期の売上高目標1,000億円の達成に向けて、M&Aを重要な戦略として積極的に推進する同社 代表取締役社長 橘 鉄平様にお話を伺いました。(取材日:2023年5月29日)

M&Aは売り上げを増やす「足し算」ではなく、事業を横に広げる有効な経営戦略

――現在までの貴社のあゆみを教えてください。

譲受け企業 ポールトゥウィンホールディングスグループ 橘様: 1994年に日本初のゲームデバッグの専門企業として愛知県名古屋市で創業したポールトゥウィンが当社グループの始まりで、2009年にポールトゥウィン、ピットクルーの2社による株式移転により、現在のポールトゥウィンホールディングスが設立されました。 2011年には東京証券取引所に上場し、今ではグループ傘下に38社、従業員数は7,200人超を抱え、国内12都市、海外12ヵ国に拠点を設けています。それぞれの事業会社のシナジーを生かしたグループ経営を進め、国内外でのビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)業務を主力事業として着実に成長させながら、直近では新たな柱としてメディア・コンテンツ事業にも注力しています。

私は2004年にポールトゥウィンに入社し、複数の国内拠点の立ち上げなどを経験したのち、2009年にアメリカ子会社の設立に携わりました。以降、2017年までアメリカ、イギリスで海外事業を拡大させ、帰国後の2018年2月より代表取締役社長に就任しました。

――成長を続けていらっしゃいますが、どんなことを心がけて経営されていますか。

橘様: コア事業のノウハウや営業チャネルを利用しながら、事業を横に広げていくことを意識してきました。エリア、分野、マーケットを拡大するためには、M&Aが重要な経営戦略であると位置付けています。

10年以上前にM&Aをし始めたころは、既存事業の売上を増やすための「足し算」のような考え方がベースにありました。直近ではそこからシフトして、新たな事業領域へのチャレンジにあたって、0から始めるのではなく、すでに形になっている企業の「経験」と「信頼」を獲得するという観点で、業務提携よりもM&Aのほうがスピード感があり、有効な手段だと考えるようになりました。

アクアプラスとのM&Aは業界内でも大きな反響

――2022年12月に日本M&Aセンターが仲介した、アクアプラス(ゲームソフト企画・開発)と、貴社グループの子会社でゲームパブリッシングを手がけるHIKEのM&Aがまさにその例ですね。

橘様: そうですね。アクアプラスの譲受けは業界内での反響がかなり大きかったです。おそらく、当社グループは「ゲームデバッグの会社」というイメージが根強く、ゲームパブリッシング事業を展開していること自体が業界内に定着していなかったことが大きかったのでしょう。

HIKEのゲーム事業はそれまで、海外のインディーゲームを買い付けて日本で展開するというビジネスモデルが中心でしたが、アクアプラスの持つ人気IPシリーズをM&Aで獲得したことで、これを軸に新たなプロモーション活動を展開していくことができます。アクアプラスとのM&Aにより、ゲームパブリッシング事業の子会社・HIKEの存在意義がクローズアップされ、認知が広がるきっかけになったとともに、当社グループが新規事業として推進するメディア・コンテンツ事業の立ち位置を固めることになり、徐々に結果も出始めています。

――これまで20社のM&Aをされてきた中で、苦労はありましたか。

橘様: アメリカの子会社で実行したM&Aが今振り返っても一番大変でした。2009年にアメリカに進出して2年ほどが経過する中、日本のやり方では通用しないことを痛感し、現地のマネジメントごと変える目的でM&Aを検討し始めました。

2012年10月にワールドワイドで展開しているe4eの事業買収を進めることになるのですが、私にとっては初めてのM&Aでしたから、プロセス全てが初めての経験で、やりとりや価格交渉の加減もわからないような状態。M&A後に新しい組織とインテグレーションしていくのもかなり骨が折れる作業でした。これ以上苦労するようなM&Aはしたくないと思うと同時に、以降のM&Aを進めるうえでの腹が決まった経験になりました。

(左)株式会社HIKE 代表取締役 三上 政高 様(右)ユメノソラホールディングス株式会社 代表取締役 最高経営責任者(CEO) 吉田 博高 様

(左)株式会社HIKE 代表取締役 三上 政高 様 (右)ユメノソラホールディングス株式会社 代表取締役 最高経営責任者(CEO) 吉田 博高 様 ※役職はM&A実行当時

M&Aで重視するのは「好きになっていただけそうか」

――M&Aを検討するうえで特に重視されていることは何でしょうか。

橘様: アメリカの子会社で実行したM&Aが今振り返っても一番大変でした。2009年にアメリカに進出して2年ほどが経過する中、日本のやり方では通用しないことを痛感し、現地のマネジメントごと変える目的でM&Aを検討し始めました。

M&A成立後に見えてくるものが多ければ多いほど失敗する可能性も高くなると経験から考えているので、DD(デューデリジェンス)の過程で経営者と接し、「自分たちのことを好きになっていただけそうか」を確かめるようにしています。

また、M&Aの成立直後から助走期間を置かずにスタートダッシュできそうかというのも大きなポイントです。そのために契約の前からPMIの視点を持って相手企業の分析をしていて、最初からきっちり成果を出していけるような相手と一緒になることが、互いにとってもメリットのある関係性だと考えます。

――M&A後、譲り受けた企業とのかかわり方やPMIのポイントはありますか。

橘様: 親会社が譲り受けたのか、子会社が譲り受けた会社なのかで私の立ち位置は変わりますが、譲渡企業の経営者と密にコミュニケーションを取るように心がけています。ウィークリーで1on1をしたり、一緒に食事をしたりしながら、何かあればすぐに相談してもらえるような関係性の構築を目指しています。また、過去に譲り受けた会社の社長に、次の譲受け企業のPMIを任せてみるなど、当社流のPMIのやり方は試行錯誤している最中です。

私から従業員の皆さんに対しては、それまでのやり方を変えていただいたり、無理やり当社のカルチャーを押し付けたりするようなことはありません。M&A後の開示の場でお伝えするのは「期待」と「安心して働いてほしい」という2つの想いを織り交ぜたメッセージです。従業員の皆さんは「どんな会社だろう」「どんな社長が来るのだろう」と疑心暗鬼でしょうから、少し物足りないかもしれません(笑)。

売上高1,000億円達成へ。M&Aを通じて新しいイメージを創り上げていく

――最後に今後の展望について教えてください。

橘様: 当社グループとして、2029年1月期の売上高1,000億円達成という目標を掲げています。主力事業と新規事業を拡大させるためにはM&Aがカギであり、当社グループに適合する企業があれば今後も積極的に推進していきたいと考えています。

また、成長に伴い従業員規模がいずれは1万人を超えていくでしょうから、働く人たちの多様性も大きなテーマになっていきます。女性や外国人、障がい者など、多様な価値観を受け入れ許容力のある組織にしていくためには、内側からの変革だけでなく、外から入っていただく方々の視点も必要です。M&Aで新しい仲間を迎え入れていくことは、その点でも大きな意味を持つはずです。グループインしていただく企業の皆さんには、新しい当社グループを創っていく立場として活躍していただけると嬉しく思います。

日本M&Aセンター担当者コメント

業種特化1部 IT業界専門グループ チーフ 室井 優太郎 (ポールトゥウィンホールディングス株式会社担当)

業種特化1部 IT業界専門グループ チーフ 室井 優太郎(ポールトゥウィンホールディングス株式会社担当)

これまで20社のM&Aを実施しているポールトゥウィンホールディングス。1件目のM&Aから自身で交渉の最前線に立っていたこともあり、橘社長はM&Aの酸いも甘いも経験されておりました。この経験値こそが今のM&Aに活かされ、譲渡オーナーがポールトゥウィングループに入りたいと思う理由なのだと本インタビューを通じて感じました。

※役職は取材時

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