[M&A事例]Vol.137 心血を注いで開発した製品と事業を存続させるため決断した成長戦略型M&A事例
敏感肌用化粧品のインターネット通信販売を展開するエクラは、3つの課題を解決するために資本提携を決断しました。その決断の背景、現在について伺いました。
譲受け企業情報
※M&A実行当時の情報
「再生」をテーマに総合リサイクル事業を行う新英ホールディングス。その中核会社として金属リサイクル事業を手掛ける新英金属(愛知県)は、関東進出の足掛かりとして2022年11月に鉄スクラップ商社のアラエ商会(東京都)を譲り受けました。2009年の社長就任以来、M&Aを取り入れながら事業を成長させてきた4代目の金子 豊久社長に、同社のM&A 戦略をお聞きしました。(取材日:2023年1月31日)
――新英ホールディングスは幅広い事業を手掛けておられますね。
譲受け企業 新英金属 金子様: 当社は、1953年に祖父が鉄のリサイクル事業として新英金属を設立したのが始まりです。トヨタ自動車の工場が近くにあったことから粉砕処理を請け負うようになり、以来、同社の事業拡大とともに当社も成長してきました。 代々金子家が社長を務め、私は4代目です。2009年に社長に就任してからは事業の多角化を推し進めてきました。
――多角化を進めた理由は?
金子様: 鉄の使用量というのは1人あたりの数値がだいたい決まっています。当然、人口が増えれば取扱量も増えますが、日本は今後人口が減っていくことがわかっている。鉄の使用量は頭打ちになるだろうとの危機感から多角化を進めてきました。 現在、金属リサイクル事業については鉄以外にも銅やアルミなどの非鉄金属から特殊金属まで広く対応するようになり、年間約85万トンの取り扱いがあります。
また、金属スクラップを輸送する新英運輸や、加工時に発生する廃棄物などを処理する新英エコライフという会社を設立するなど、周辺事業も自社で完結できるようにして収益化を進めてきました。
そのほかにも、「再生」をキーワードに介護や質店、再生医療といった事業にも進出しています。2016年には総合リサイクル事業の持株会社として新英ホールディングスを設立しました。この多角化を推し進める上で欠かせなかったのがM&Aでした。
――M&Aの担当者がいらっしゃるそうですね。
金子様: はい。社長就任当初からM&Aは成長戦略の手段の一つとして有効だと感じていましたので、常に良い相手がいないか広く情報収集しながら検討しています。
先ほども言ったように人口当たりの取扱量が変わらないなかで違うエリアに進出しても、限られた量を奪い合うことにしかなりません。だったらすでにそこを商圏にしている譲渡希望の会社を譲り受けて当社が責任をもって事業を軌道に乗せることができれば、その土地の商習慣や知見もわかったうえで着実にエリアを拡大していけます。そうした観点でこれまでグループ全体で5社を譲り受けてきました。日本M&Aセンターには今回のアラエ商会を含め3社仲介いただいています。
――アラエ商会とのM&Aはどんな戦略の元で決断されたのですか。
金子様: 新英金属の社長就任時、私がミッションに掲げたのが海外と関東への進出でした。海外に関しては2011年と2014年に韓国、2015年にタイに拠点を開設して順調に稼働しています。
関東進出はまず営業所を設けて本格進出の機会を検討してきました。 関東は鉄スクラップの供給の余剰地域のため他地域への輸送や輸出が盛んです。一方で、当社がある中部地方は国内でも需要が旺盛な地域で供給が追いつかないほどです。関東から中部に鉄を運ぶルートを求めて企業を探していましたので、条件はとにかく「会社が港に近い場所にあること」でした。しかし、なかなか条件にあった企業は出てきませんでした。
ですから、2022年に日本M&Aセンターからアラエ商会を紹介されたときには、すぐに「進めてほしい!」とお願いしました。アラエ商会は千葉の船橋港から数分のところにヤード(置き場所)をもっていましたので立地は完璧でした。
――そのほかアラエ商会のどこに魅力を感じましたか。
金子様: アラエ商会は加工済みの鉄スクラップを仕入れて輸出する商社的な機能をもった会社です。年間20から30万トンの取り扱いがあり、当社と合わせれば約100万トンになります。スケールメリットを生み出すにはちょうど良い取扱量でした。 当社もリーマンショック以前は新英金属だけで100万トンの取り扱いがありました。取扱量を再び100万トンにすることが悲願でしたが、アラエ商会と一緒になることでそれも実現できます。 あとは考え方や価値観が当社と良い形で融合できるかという点については、新江 一夫社長の誠実なお人柄に接して安心できました。
――新江社長は創業経営者です。一代で築いた会社を譲渡することに葛藤もあったと思いますが、交渉を進める中で配慮されたことはありますか。
金子様: 新英金属も祖父が起業した会社です。代々オーナー家がその想いを継いで経営してきましたから、私にとっても会社はわが子みたいなものです。これまで複数社を譲り受けてきましたが、わが子同然の会社を他人にゆだねる社長の気持ちにしっかり寄り添うことが大事だと思っています。「お金を払うからいいでしょ」というものではないですよね。常に「想いも引き継がせていただく」という気持ちで交渉に臨んでいます。
――2022年11月30日付でアラエ商会を子会社化してから約2カ月です。どんな新しい動きが始まっていますか。
金子様: アラエ商会はこれまで輸出がメインでしたが、今後は国内販売にも力を入れていきます。新英金属は取扱量のほとんどを国内のお客様に買っていただいていますが、これまでは供給量の問題から追加の発注に十分にお応えできずにいました。当社の取引先とアラエ商会をつなぐことで、そうした要望に応えていくとともにアラエ商会の国内の販売先確保を見込んでおり、実際に取引も始まっています。
また、今後はアラエ商会でも加工ができる設備を整えて、加工品を国内外に販売できるようにすることで付加価値を生み出していきたいと思っています。
――今回のM&Aを振り返っていかがですか。
金子様: M&Aは必要性を感じた時に動き始めるのではなく、常に良い案件がないか情報を集め検討することが大事ですね。 今回も、以前から担当コンサルタントの松岡 良典さんに「こういう案件があったら紹介してほしい」と伝えていたことで実現したお話でした。当初は当社の名前は挙がっていなかったそうですが、聞きつけた松岡さんが「ぜひ提案したい企業がある」とすぐに話をもってきてくれたと聞いています。非常にスピード感のある対応で助かりました。
当社にはM&A担当がいますが、担当以外の役員はもちろん従業員にも常に情報を集めるように伝えています。日ごろから種をまいていれば、今回のように良いお話を逃すこともありません。そういう意味でも日本M&Aセンターは特に情報量が多いのでありがたいです。
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提携法人部 シニアチーフ 松岡 良典 (新英金属株式会社様担当)
新英グループのM&Aに携わらせていただくのは今回で3件目になります。金子社長が社長就任時からの夢だった関東進出。その夢の実現をお手伝いできたことは担当者としてもこれ以上ない幸せです。 また、このお話が進む直前に両社で事業の取引も始めていたとお伺いし、多くのご縁に恵まれたディールだと感じました。