[M&A事例]Vol.133 「良い仕事をしたい」――。2社譲り受け生き残りを図る創業75年の老舗樹脂素材製品メーカー
樹脂素材製品メーカーのカツロンは、1年半で2社を譲り受けました。元々成長戦略にはなかったM&Aをなぜ行ったのか、M&Aの目的と現在について伺いました。
譲渡企業情報
譲受企業情報
※M&A実行当時の情報
当社がお手伝いをして2016年にM&Aでの譲渡を実行された商栄機材株式会社 会長 竹田敏男様に、2019年3月開催のM&AセミナーにてM&Aまでの経緯や心境、現在の様子などをお聞きしました。
竹田様: 商栄機材は私が1976年に創業した、環境プラント及び各種コンベヤのメンテナンス・設計・製作等を行う会社です。元々は違う会社に勤めていたのですが、そこを退職して会社を立ち上げた形ですね。なかなか厳しい時代もありましたが、少しずつ自社でできる範囲のところから事業を始めて、着実に拡大してきました。
“人材採用”が成長の課題に
竹田様: 当社は良いお客様に恵まれていましたし、事業内容についても、年々環境問題に対する社会意識は高まっていますから、安定していました。 悩みの種だったのが“人材の採用”です。当社の事業規模や地域柄、若い大学卒の優秀な人材はなかなか入社してくれません。だったら技術者派遣会社に頼るのはどうかというと、コストが合わない。「人材がいればもっと売り上げがあがるのに!」と思いましたね。優秀な人材の採用については本当に頭を抱えました。 経営についてはそんな悩みを抱える一方、70歳を過ぎてもバリバリ社長をしていました。取引先の一部の方からは「そろそろ後継者はどうなんですか?」と言われることもありましたね。 私には息子がいるのですが、医者になっていましたから会社を継ぐ意思はありませんでした。社員の中でも後継者候補はいたのですが、実際に打診すると彼の家族の反対もあり、うまくいきませんでした。「いずれ誰かに引き継がなくては」と思いながら、気付けば70歳を過ぎ、まだ自分が経営しているという感じでしょうか。
スムーズに融合するとは限らないけれど、それを上回るメリットがあると確信
竹田様: 取引先の会社が、後継者不在のためにM&Aで自社を売却したんです。規模も業種も、当社と同じような会社だったので、この話を通じてM&Aを非常に身近に感じたのを覚えています。 一方で学んだこともありました。M&A後3か月くらいで元社長が退任されたのです。元社長はもっと長く引継ぎを想定していましたが、買い手企業との折り合いがつかず予定より早い退任となりました。どうやら元社長が“会社離れ”できなかったのが原因のようでした。M&Aを通じた会社の成長を願うのであれば、自分の社長業の引き際は重要だなと感じました。その会社はM&Aで無事引き継がれ、今も順調に成長をしています。
M&Aは2つの会社が一緒になることですから、絶対に摩擦が起こらないとは言い切れません。でも、当社をきちんと第三者目線で見て、成長の道に導いてくれる仲間ができることは、たとえ小さな摩擦が起きたとしてもそれを上回るメリットだと思ったんです。 また、親族承継を選んだからといって必ずしも仲良く経営していけるわけではありません。親の目線から見たら子供の経営は、どうしても心配になってしまいますからね。『会社を息子に譲ったにも関わらず、ついつい必要以上に口出しをしてしまう』という経営者仲間の愚痴も聞いてきました。そういう意味でも、M&Aで第三者に譲るという距離感は、今後の会社の成長のためにも最適だと考えるようになりました。
私以上に、当社のより良い部分を引き出せるお相手
竹田様: JRC様はコンベヤ部品の製造を行っているトップ企業ですから、コンベヤのメンテナンスや設計を行う当社と組むことで、高いシナジーが見込めるお相手だと思いました。2社が一緒になればお客様により付加価値の高い営業ができます。また、グローバルで新しい視点を当社に与えてくれるという期待感もありました。 当社は“人材の採用”が課題でしたが、こちらの面もJRC様から出向していただけるということで解決することができました。私以上に、当社のより良い部分を引き出していただけるお相手だなと思いました。
新たに工場を建設、人が集まるきっかけに
竹田様: 新しい大きな工場が今年の2月に完成しました。工場建設はM&Aがなかったら絶対できていませんでした。M&A後すぐに建設が決定したんです。 当社の工場は4か所に散らばって立地していたのですが、それが1か所になるだけでも利便性は上がります。さらに期待できるのが人材の面ですね。とても立派な工場を立地条件の良い場所に建てていただきましたから、新しい工場にもっと人が集まってくれることでしょう。良い人がたくさん集まることで、より強い会社に成長していけるのではと未来の可能性を感じています。
今は引継ぎ期間を終え、週2日だけ出社しています。新しい経営陣の下で、従業員が増え、みんなが元気に働く姿をみると、本当にM&Aをしてよかったなと感じます。M&Aに最初は戸惑っていた従業員もいると思います。しかし、こうやって成長の風が吹いて会社が良い方向に変わっていくことで、間違いなく全員が「よかったな」と思ってくれる―そんな会社になっていっていると確信しています。
M&A成功インタビューは、 日本M&Aセンター広報誌「M&A vol.55」にも掲載されています。
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商栄機材様の製品は全国自治体の環境プラントに導入されるなど、業界において多大な実績がありました。長年創業者として会社を牽引されてきた竹田様ですが、M&A後の“会社のさらなる成長”と“従業員の働きやすさ”に主眼をおいてお相手を決められたのが印象的でした。 今回のM&Aによって、クロスセルによるシナジー効果はもちろんのこと、人材採用の進展や新工場完成など、新たな活気が生まれていて担当として嬉しく思います。両社の今後ますますのご発展を祈念しております。