[M&A事例]Vol.146 10年後を目標に譲渡先を探し始めるも、わずか1年で同じ志をもつ企業と巡り合う
沖縄県で防水工事業を手がけるヤマト防水工業は、10年後の譲渡を見据え準備を始めたところ、想定より早くにお相手が見つかりました。その経緯やM&A後について伺いました。
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70歳を前に事業承継をどうするか悩んでいた熊本県の株式会社友建設の宮本和博社長ご夫妻。廃業も考えましたが、創業以来42年にわたり支えてくれた従業員や取引先に対して無責任なことはできないと、M&Aによる株式譲渡という第三者承継の道を選びました。2022年8月、M&A実施直前の宮本社長に決断に至るまでの経緯と今後のビジョンについてお聞きしました。
――友建設は、宮本社長が一代で築いた会社ですね。「手の届く夢」をテーマに、高品質でローコスト、スタイリッシュな住まいを提供しています。
譲渡企業 株式会社友建設 宮本様: 学生の頃から建築に興味があったんです。建築関係の学校を卒業して就職した関西の建築会社では現場監督を経験し、その後、職場の仲間の起業に伴って転職。基礎工事や土木工事など、とにかく現場経験を積みました。 6年ほどたった頃でしょうか。会社を解散するという話が出て、実家の熊本に戻ることにしました。そこで、1980年に子どもの頃から興味のあった住宅建築をしようと独立したんです。友建設という会社は仲間と作った会社「六友組」から付けました。6人の仲間で立ち上げたので6人の友の組、という意味です。
――しかし、最初は住宅建築がメインではなかったのですね。
宮本様: 地元とはいえ、仕事上の付き合いのない中での起業でしたから、最初から住宅の仕事は舞い込んできません。それまでの経験を活かして基礎工事や土木工事の仕事を請け負いながら、なんとか事業を続けました。創業から5年ほどたって、両親の知り合いの紹介もあって新築住宅の仕事を初めて受注することができました。 当時はすべて注文住宅です。ひとつひとつ打合せをしながら、施主さんの希望に合わせて、わが家を建てるつもりで家づくりを続けてきました。
――現在の主力事業である企画住宅はどんな経緯で誕生したのですか。
宮本様: それまでの注文住宅の受注は主に紹介経由でしたので、だんだん数が減ってくる中で次の手を考えなければと思っていました。最初は老後に夫婦二人で暮らせるような小さな家を考えました。高齢化が進む中でこれから求められるだろうと思ったんです。 当時、すでに17.8坪で3DKほどという間取りの家を売り出している会社があったので、さっそく視察に行きました。どういうお客さんが来ているのかと思ってみていたら、小さな子どもを連れた若い家族連ればかりなんです。 そもそも私は、家というのは子育てがひと段落した50代以上の人が買うものと思っていました。しかし、価格が手ごろになることで、若い家族が子育てのしやすい家を求めていることを知りました。大きな発見でしたね。
――そこで1988年に最初に売り出されたのが企画住宅「カレント」ですね。その後、2005年に「夢55の家」を発売されました。どんなところを工夫されましたか。
宮本様: 例えば、ダイニングや玄関を広くしました。その分、他社に比べて他の部屋は狭くなりますが、家族が集まる場所をゆったりすることで、快適なだんらんの場を作りました。人の出入りも多いでしょうから玄関も広い方がいいだろう。自分が住むとしたら、その方がいい。その住宅を550万円で売り出しました。 住宅を手掛ける上で私が大事にしてきたのは、「自分が住むとしたらどんな家がいいか」ということです。その思いは今も変わりません。従業員たちにも日ごろから「わが家を建てるつもりで家を建てよう。そうすれば精一杯の120%の力を出す」と伝えています。 現在は「夢55の家」のほか「Hokuo」「Aozora」「Base」の4タイプを売り出していますが、企画住宅とはいえすべてプラン通りにはいきません。お客さんのライフスタイルに合わせて柔軟に変更もします。縁あって家づくりという夢のお手伝いをするのですから、誠意をもって対応したいのです。
――今回、どんな経緯でM&Aを決断されましたか。
宮本様: 70歳が目前になった頃から、会社のこれからを考えるようになりました。私には息子がいますが、継がせようとは思っていませんでした。経営は簡単ではありません。息子は別の道を進みました。甥が入社してくれましたが、違う業界からの転職です。 最初は一代で会社を畳むことも考えましたが、創業から42年、ここまで支えてくれた従業員やお客さん、取引先のことを考えると、無責任な判断で会社の未来を決めることはできないと思いました。 やはり、これまで以上に友建設を発展させていきたい、そう考えを改めてたどり着いた結論が第三者に株式を譲渡するM&Aという手法でした。
――2021年12月に日本M&Aセンターと提携仲介契約を交わして、翌年には譲受け先候補として3社から手が上がりました。最終的にFFFホールディングスを選ばれた決め手は何ですか。
宮本様: どの企業も立派な会社でしたし社長さんもいい方でしたので非常に悩みました。ただ、最終的に決め手となったのは、事業の将来を考えたときでしょうか。友建設は現在、熊本県内を中心に事業を展開していますが、実はこれまでも福岡や宮崎、遠いところでは北海道から発注をいただいたことがあるんです。ただ、人員や提供できるサービスに限界があり、これまではすべてお断りしていました。 FFFホールディングスは福岡県に拠点に、住宅設備機器の卸販売のほか、新築住宅やリフォームなど、住宅に関連する企業が集まる会社です。FFFホールディングスと一緒になれば、今後カバーするエリアを広げたり、提供できるサービスを増やしたりでき、友建設をもっと成長させられると思いました。FFFホールディングスも、これから住宅建築の事業領域を広げていきたいとのビジョンを持っていましたので、将来を見据えたときにお互いにメリットもあるだろうと思い決断しました。
――最後に今後のビジョンをお聞かせください。
宮本様: FFFホールディングスから新しい社長を迎えます。ただ、当面は私も取締役会長として従業員とともに働く予定です。従業員の待遇も変わりません。大きなグループの一員となることで、福利厚生の面も良くなることを期待しています。従業員にはこれまで通り、安心して仕事をしてほしいと思います。
――FFFホールディングスは本業の住宅設備機器の卸売事業のほか、M&Aで複数社を譲受けしながら住宅関連事業を広く手掛けていますね。
譲受け企業 FFFホールディングス株式会社 中村様: 当社は1951年に福岡で住宅設備機器の卸売事業として設立しました。これまでBtoB事業を展開してきましたが、近年は建設業界でのさらなる成長を目指してBtoC事業への進出も加速させています。これまで、住宅設備機器販売、水道資材販売、ビル・施設等の部分リニューアル事業、マンション・戸建て住宅のリフォーム・イノベーション事業など、住宅関連事業を手掛ける会社をM&Aで迎え入れてきました。 今回、戸建て住宅を手掛ける友建設とのご縁をいただき、九州の建設業界においてさらに多くの受注機会を増やしていけるのではと考え、譲受けを決断しました。
――友建設のどんなところに魅力を感じていらっしゃいますか。
中村様: 安定した実績はさることながら、「高品質・ローコスト・スタイリッシュ」をテーマにした企画住宅というビジネスモデル、熊本の地域に根差した事業展開をされているところが魅力です。それに、宮本社長の「常にわが家を建てる気持ちで」というお客様ファーストの理念は、当社が創業以来大切にしてきた「誠心誠意の心」に通じると深く共感しました。
トップ面談で感じた宮本社長ご夫妻の従業員を大事にする温かいお人柄にも惹かれました。今日の友建設を支える源は、このお人柄なのだと思います。私も宮本社長のお気持ちを受け継いで、これからは友建設の従業員の皆さんと「ファミリー」として共に進んでいきたいと思っています。 当社が理想とする資本提携、M&Aは「お互いの理念や目標を理解し合い、それに向かって一緒に進んでいくこと」です。現在、多くのグループ企業がありますが、各社の従業員同士は互いを認め合って、それぞれに思いをもって切磋琢磨しています。友建設の方とも新たな仲間として共に前進していけたらと思っています。
――今後のビジョンについてお聞かせください。
中村様: 卸販売から住宅建築、リフォームといった事業領域、法人・個人といった顧客層など、多角的に機会を捉えて九州の建設業界においてさらなる成長を目指します。
沖縄県で防水工事業を手がけるヤマト防水工業は、10年後の譲渡を見据え準備を始めたところ、想定より早くにお相手が見つかりました。その経緯やM&A後について伺いました。
北海道全域で道路の舗装工事を行う道路建設は、当初掲げていた条件とは異なる企業を譲り受けます。M&Aから1年たった今、決断の背景と現在の状況を伺いました。
自前でPMIに取り組む難しさを痛感して日本PMIコンサルティングのPMI支援サービスを利用。ご自身の経験からPMIの難しさと効果について伺いました。
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「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。
西日本地域金融部チーフ 杉本 陽介 (株式会社友建設様担当)
後継者問題について、熟考しながらも一つ一つ真剣に向き合い、決断をしていく姿が印象的でした。譲渡企業にとっては基本的に一生で一回限りのM&Aです。当初、不安も多かったと思いますが、徐々にFFFホールディングスとの提携による今後への期待が増していき、非常に前向きな資本提携になったかと思います。 「建築が好き」。社長がよく仰っていた言葉です。当面は会社に残り、今まで通り会社を引っ張りながら、大好きな建築を続けていただきたいと思います。今回、宮本様のサポートをさせていただいたことを光栄に思うとともに、これからも地域に必要な会社の存続に寄与していきたいと思います。
成長戦略部 野田 遼太郎 (FFFホールディングス株式会社様担当)
本件は事業承継問題の解決のみならず、住宅資材・建築業界において、より良い住環境の提供を目指す両社の成長戦略にとっても、非常に意味のある資本提携です。両者のミッション・ビジョン・バリューが共通していたからこそ、ご縁に繋がったものと強く感じます。 同じ九州人として私自身、さらに地方創生をご支援していくとともに、今後の両社、関係者様全員のますますの発展とご活躍をお祈り申し上げます。