[M&A事例]Vol.129 深刻なドライバー不足と高齢化で事業継続が困難に。採用力のある会社にグループインしてわずか半年で採用に成功
宮本運輸は、長らく人材不足の課題を抱えていました。事態が深刻化し、採用力のある会社への譲渡を行って半年、採用を含め現状について話を伺いました。
譲渡企業情報
譲受企業情報
※M&A実行当時の情報
物流事業の60%を占めるトラック運送業では今、M&Aによる業界再編が加速しています。再編が進む業界では、経営状況の厳しい企業であっても、譲受け企業が見つかりやすいです。2021年9月、奥野運送株式会社は後継者不在のため、東開物流株式会社にM&Aで株式譲渡を行いました。譲渡企業、譲受け企業の双方の社長に、M&Aを決意された経緯や心境、現在の様子についてお伺いしました。
苦しい経営だったが 200を超える買い手候補が見つかる
2021年9月16日、奥野運送株式会社と東開物流株式会社のM&A成約式が執り行われました。奥野運送の奥野博社長は、長年頭を悩ませてきた後継者問題、資金繰りの苦労から解放され、心の底からほっとした表情を浮かべていました。式に同席した奥様は、「中学から手伝いしながら働いてきたけど、おめでとう。やっと引退やで」と、奥野社長の苦労を労います。 妻の言葉に奥野社長も涙を浮かべてこう話します。 「本当にほっとしています。家内にもかわいそうなくらい苦労をかけました。こういう機会があって本当に良かったと思います」
奥野運送は奥野社長の父親が1957年に個人事業として創業して以来、大阪府泉佐野市で運送業を営んできました。泉州タオルの産地であり、関西国際空港や高速道路が近いという立地の良さから、これまでニーズに応じてさまざまな荷物を運んできました。しかし経営は難しく、燃料費の高騰や資金繰りに苦労してきたといいます。
さらに、奥野社長には後継者候補がいませんでした。父親から受け継いだ会社をどう続けていけばいいか。75歳になり体力も弱くなってきたため、長年お世話になっている会計士に相談したところ、M&Aを提案されます。そこで、公認会計士を通じて日本M&Aセンターに問い合わせることになりました。
案件化すると、200を超える買い手候補がマッチングされました。その中から実際にお会いしたいと手が上がった最初の企業が、東開物流だったのです。
独自に動くと時間もコストもかかる上に リスクも大きいとM&Aを決意
北村篤様: 「本来でしたらコンプライアンスを考えて自社インフラで営業所を構築するのが一番ですが、陸運局の許認可を得るのに6~8カ月かかる上に、規模感にもよりますが預託金など数千万円かかってしまうんです。M&Aでしたらすぐに営業を開始できます。 また、2024年に運転手の時間外労働を減らす法律が適用される『24年問題』もあり、自社単独でエリアを広げていくには限界を感じていたんです」
M&Aすることを決めた当初は、業界のネットワークを利用して、自力でM&Aを進めようと考えていたそうです。しかし、自分で動いてみると、ぴったりな事業内容の会社を見つけられなかったり、事実と異なる情報が後から出てきたりと、独自に進めるのはリスクが高いなと感じるようになりました。そこで、北村社長は日本M&Aセンターに依頼することにしたのです。「仲介手数料を払う分、企業のリサーチもしっかりされていますし、さまざまなリスクも回避できますから」と北村社長は決断の理由をこう話します。
お相手探しで大事なのは価値観と業務内容 そして何より「決断する」こと
北村社長が奥野運送を訪れて奥野社長とお会いする「TOP面談」が実施されたのが7月13日。その翌日には北村社長は奥野運送とのM&Aを決めていたそうです。
北村篤様: 「運送会社はそれぞれに得意とする業態をもっています。弊社は貸切事業よりも業務請負事業を得意としています。例えば、お客様のところへ集荷に行き、弊社で仕分けをして発送するといったことです。通常の運送会社は、集荷と配達はしても仕分けまではしません。奥野運送さんは当社と業態が一致したんです。当社のインフラをそのまま大阪に持っていけるということで即決でした」
奥野社長の相手企業への希望は、従業員の雇用継続、奥野社長のご兄弟の雇用継続などでしたが、すべて北村社長が承諾されました。お互いに条件が一致したことで、1社目のTOP面談で成約となりました。
今回、初めてのM&Aとなった東開物流。このM&Aを皮切りに、今後、中国地方、東北地方へもM&Aで拠点を広げる方針です。 「今後の計画を進める上でも、流れを作るいいきっかけになりましたし、私自身も勉強になりました」と北村社長は振り返ります。
M&Aによって東開グループの一員となった奥野運送。東開物流から新社長を迎え、奥野運送の従業員の反応は明るい。「M&Aをしたことで会社の売り上げにつながるなら、やりがいがある」「活気が出てきてドライバーさんの意識も変わった」と口々に話します。 「我々のような田舎の小さい会社と関東の会社では得意先1つとっても違います。従業員も今まで以上に頑張ってくれると思います」 代表を外れた今も、毎日会社に出社している奥野社長は、そんな従業員の姿を見て、はればれとした笑顔を見せました。
北村篤様: 「まずはお相手の経営者の方と価値観が合うかどうかです。ここがイコールにならないといけません。そのうえで自社が営んでいることとなるべく共通する部分があるかどうかを検討することですね。最後は決断することです。考えていても始まりません。実は私もM&Aを考え始めてから3年が経っているのです。どこかで実行しないと先に進めません」
北村翔太様: 「奥野会長は、譲渡後すぐは毎日会社に出社されて短い時間でも業務が終わるまで会社で様子を見ていただいていましたが、最近は顔を出す日が少しづつ減り、安堵しているといったお言葉もいただいております。 社員の皆さんには雇用契約書の見直し、就業規則等の再制定の労務説明会など開催しました。最初は戸惑いも見えましたが、ともに奥野運送に赴任した弊社永井を中心に前向きに新体制へと順応していただけるよう頑張っています。 業務に関しては東開物流の業務を早速組み入れ、売り上げ向上にむけ取り組んでいるとことです」
宮本運輸は、長らく人材不足の課題を抱えていました。事態が深刻化し、採用力のある会社への譲渡を行って半年、採用を含め現状について話を伺いました。
シンガポールで、クレーン事業と重量品輸送事業を手掛けてきたHuationg Holdings Pte Ltd.。同社がM&Aを決断した理由を伺いました。
多彩な低温物流サービスを行うニチレイロジグループ。マレーシアで低温物流事業を手掛ける会社に出資を行った同社に海外戦略をお聞きしました。
まずは無料で
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「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。
会計事務所3部 前川 優介 (奥野運送株式会社様担当)
コロナ禍で厳しい経営を強いられる企業が多いと思いますが、そうした企業でも会社の存続、従業員の雇用等を守る方法がM&Aです。奥野運送様もそのような厳しい中、廃業も検討しておられましたが、当社の強みを活かし、多数の買い手候補から、素晴らしいお相手を紹介できました。ご両社のこれからのご発展をお祈りいたします。
業界再編2部 宮川 智安 (東開物流株式会社様担当)
トラック運送業界に迫る2024年の時間外労働規制を睨んだ、戦略的なM&Aでした。ご縁を感じる場面も多々あり、東開物流北村社長の明確なビジョンと、奥野運送様へのリスペクトが本件を成功させたと思います。