創業者のDNAを受け継ぐ -イオンによるダイエーの子会社化-
⽬次
- 1. 著者
企業の歴史を紐解く時、「創業者」のDNA を理解することが重要なファクターとなる。なぜなら、創業者の精神は企業史の「たて糸」、あるいは存続する限りその企業の無形のバックボーンとなるからである。
ダイエーの創業者は故中内功氏。中内家は代々の土佐藩士で、祖父・栄氏が医術修学のため大阪に出て後に神戸で眼科医を開業した。父・秀雄氏は薬学部卒業、鈴木商店勤務の後、薬局を経営した。父親の代まではいわば「士業」の家柄であった。中内氏は戦後、いくつかの商売を経て、「主婦の店ダイエー」をオープンする。その立ち上げ以降まさに徒手空拳、智恵と才覚で未知の領域を開拓していく姿が中内氏の真骨頂であった。
一方、イオンの創業者岡田卓也氏は、その祖を1758年まで遡る四日市の老舗呉服商「岡田屋」の七代目として誕生した。岡田氏は、約250年に及び連綿と続く家業に涵養された、徹頭徹尾の「商人」といえる。終戦後大学在学中に岡田屋七代目を継承、その後「岡田屋スーパー」を創業した。岡田家の家訓「大黒柱に車をつけよ」とは、小売業に安住の地はない、変化に対応せよ、ということだろう。岡田氏はこの家訓さながら、イオンの買収戦略とスクラップ・アンド・ビルドを率先遂行し、変化に対応してきた。
故中内巧氏と岡田卓也氏。「士魂」と「商魂」。フロンティア・スピリットとイノベーション・マインド。これら2つが統合を果した今、日本最大のGMSグループが形成されたというだけではない。優劣を乗り越え融合した今、新たな日本の組織小売業の在り方を提唱・リードしていくことだろう。
Future vol.1
当記事は日本M&Aセンター広報誌「Future vol.1」に掲載されています。