事業承継・引継ぎ補助金とは?中小企業庁が解説!
本記事では、事業承継・引継ぎ補助金の概要と、本補助金の制度運用を担う、中小企業庁財務課の高橋正樹課長補佐による解説(※)、最新の公募概要をご紹介します。
※本記事は2021年6月30日に公開された内容を編集しています。役職等は取材当時の内容です。
事業承継・引継ぎ補助金とは
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継や事業再編、事業統合を促進し、日本経済の活性化を図ることを目的とした補助金です。
具体的には、事業再編、事業統合を含む事業承継やM&Aを契機として、経営革新等の取り組みや、M&Aによる経営資源の引継ぎ、廃業・再チャレンジを目指す中小企業者等に対し、取り組みに必要な経費の一部補助を行います。
この記事のポイント
- 事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業の事業承継やM&Aを支援し、日本経済の活性化を目指す補助金で、経営革新、専門家活用、廃業・再チャレンジの3事業に分かれる。
- 補助金は、M&A支援機関に登録された専門家による支援や、廃業に伴う経費を補助対象とし、申請は電子申請のみで行われる。
⽬次
事業承継・引継ぎ補助金のポイント
本補助金の主なポイントは、以下の通りです。
①補助の対象・取組みごとに3事業が設定されている
本補助金は「①経営革新事業」「②専門家活用事業」「③廃業・再チャレンジ事業」の3つで構成されています。「③廃業・再チャレンジ事業」は、「①経営革新事業」「②専門家活用事業」との併用申請が可能であり、M&Aへの取り組み後に廃業した際には「③廃業・再チャレンジ事業」単独での申請が可能になります。
②M&A支援機関登録制度に登録した事業者が支援したものに限られる
専門家活用事業において委託費のうち、FA業務又はM&A仲介業務に係る相談料、着手金、成功報酬等における「中小M&Aの総合的な支援に関する手数料」に関しては、 M&A支援機関登録制度に登録されたFA・M&A仲介会社が支援したものに限り、補助対象経費となります。FA・M&A仲介費用以外の経費に関しては、事務局が認めたものが補助対象になります。
③各事業において、加点事由が設定されている
例えば「①経営革新事業」では、交付申請時点で『健康経営優良法人』であること。」「経営力向上計画または経営革新計画の承認を得ていること。」等が、代表的な加点事由になります。その他の加点事由については、各事業の公募要領をご確認ください。
事業承継・引継ぎ補助金が創設された背景
事業承継・引継ぎ補助金の創設された背景などについて、中小企業庁財務課の高橋正樹課長補佐(※取材当時)にお話を伺いました。
ーまず、日本の事業承継の状況について教えてください。
「我が国において、経営者の高齢化が年々進んでいます。こうした中、事業承継の取組も盛んに行われており、後継者不在率は改善傾向にありますが、依然として高い水準にあります。国は2018年度以降、事業承継を後押しするため事業承継時における相続税と贈与税負担を実質ゼロとする税制措置を講じてきました。ただ新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、2020年には税制の優遇措置を活用する件数が前年に比べて月平均で2割以上減り、中小企業が継承時期を後ろ倒しする傾向がみられます。」
「後継者不在の中小企業はたとえ黒字経営であっても、休廃業を選択せざる得ない状況があります。2020年の廃業等は過去最多の約5万件を記録し、また廃業事業者のうち黒字廃業の比率は6割以上で推移しており、これまで中小企業が蓄積してきた貴重な経営資源が失われている状況です。そのため中小企業の経営資源散逸を回避する手段の一つとしてM&Aの重要性が高まっています。」
「また、例えばM&Aを実施した企業は実施していない企業に比べて、労働生産性や業績が高いという調査結果もあり、M&Aは中小企業の生産性向上のための重要な手段の一つにもなっているといえます。これまで中小企業のM&Aは右肩上がりで増加してきており、足下では年間3~4千件程度実施されていると認識しています。しかしながら、中小M&Aの潜在的な譲渡側は約60万社との試算もあり、中小企業が円滑にM&Aを行える環境を整備することが求められています。」
「今回の事業承継・引継ぎ補助金は幅広い費用に対応し、廃業を伴うケースにおいても廃業費を補助対象とするものとなっています。M&Aをする前段階で、民間の仲介事業者などの支援を受ける専門家活用費用を補助する『専門家活用』の類型と、M&A後に経営革新のため新事業の展開や生産性向上を図るための費用を補助する『経営革新』の類型があります。」
※補足:令和3年度補正予算より、従前の経営革新型・専門活用型に含まれていた事業「経営・再チャレンジ」が、第3の事業として新設された。
事業承継・引継ぎ補助金の申請を検討する方へ
ー最後に、本補助金の申請を検討している方へメッセージをお願いします。
「交付申請の受付開始から問い合わせも多く寄せられており、世の中の関心が高いと感じています。本補助金は、事業統合や事業再編などM&Aに取り組む際、あるいはM&A後の新事業に取り組む際の設備投資や人件費等が対象となります。多くの中小企業や経営者の方々に是非ご検討いただき、本補助金を最大限に活用してもらえればと思います。」
事業承継・引継ぎ補助金(7次公募)の概要
2023年9月15日に事業承継・引継ぎ補助金(7次公募)の公募要領が公表されました。
事業承継・引継ぎ補助金は、補助の対象となる取組内容や経費の種類に応じて、「①経営革新事業」「②専門家活用事業」「③廃業・再チャレンジ事業」の3種類の補助金で構成されています。
「①経営革新事業」はさらに「創業支援型/経営者交代型/M&A型」の3種類、「②事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)」は、「買い手支援型/売り手支援型」の2種類の支援類型が設定されています。
補助金や支援類型ごとに補助上限額等が異なるため、詳細については「事業承継・引継ぎ補助金ウェブサイト」をご確認ください。
①経営革新事業
事業承継やM&A(事業再編・事業統合等。経営資源を引き継いで行う創業を含む。)を契機とした経営革新等(事業再構築、設備投資、販路開拓 等)への挑戦に要する費用を補助します。
今回の公募より、「同一法人内で承継予定の後継者候補による取組み」も新たに補助対象となります。
① 経営革新事業 | |
---|---|
補助対象経費 | 設備投資費用、店舗・事務所の改築工事費用 等 |
補助率 | 2/3又は1/2 |
補助上限 | 600万円以内又は800万円以内 ※一定の賃上げを実施する場合は補助上限を800万円に引き上げ (補助額の内600万円超~800万円の部分の補助率は1/2) |
事業承継、M&A(経営資源を引き継いで行う創業を含む)を契機として、経営革新等に挑戦する中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む)
例:「新しい商品の開発やサービスの提供を行いたい」「新たな顧客層の開拓に取り組みたい」「今まで行っていなかった事業活動を始めたい」と考えている方
②専門家活用事業
M&Aによる経営資源の引継ぎを支援するため、M&Aに係る専門家等の活用費用を補助します。
②専門家活用事業 | |
---|---|
補助対象経費 | M&A支援業者に支払う手数料(※)、デューデリジェンスにかかる専門家費用、 セカンドオピニオン 等 ※M&A支援機関登録制度に登録されたファイナンシャルアドバイザー(FA) またはM&A仲介業者によるFAまたはM&A仲介費用に限る |
補助率 | 2/3又は1/2 |
補助上限 | 600万円以内 |
M&Aにより経営資源を他者から引継ぐ、あるいは他者に引継ぐ予定の中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む。)
例:「M&Aの成約に向けて取組を進めている」方、「M&Aに着手しよう」と考えている方
③廃業・再チャレンジ事業
再チャレンジを目的として、既存事業を廃業するための費用を補助します。
③廃業・ 再チャレンジ事業 |
|
---|---|
補助対象経費 | 廃業支援費、在庫廃棄費、解体費 等 |
補助率 | 2/3又は1/2 |
補助上限 | 補助上限:150万円以内 |
事業承継・M&Aに伴い既存の事業を廃業し、新たな取り組みにチャレンジする予定の中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む。)
※再チャレンジの主体は、法人の場合は株主、個人事業主の場合は個人事業主本人となります。
※廃業・再チャレンジ事業は、経営革新事業・専門家活用事業と併用できます。
例:事業の廃業を考えている方
事業承継・引継ぎ補助金の交付申請受付期間
事業承継・引継ぎ補助金(7次公募)の申請受付期間は、「①経営革新事業」「②専門家活用事業」「③廃業・再チャレンジ事業」の3事業ともに、以下の通りです。
申請受付期間:2023年9月15日(金)~2023年5年11月17日(金) 17:00まで
事業承継・引継ぎ補助金の申請方法
事業承継・引継ぎ補助金の申請は「電子申請(Jグランツ)」のみでの受付になります。そのため申請する際にはGビズIDプライムアカウントを取得する必要があります。
アカウント取得には、確認や審査に2~3週間時間を要する場合があるため、余裕をもったスケジュールで手続きされることをお勧めします。
そのほか、詳細については「事業承継・引継ぎ補助金ウェブサイト」をご確認ください。