上場企業グループに入って成長を加速
M&A実行の背景
北有建設株式会社は1977年の設立来、舗装工事を主力に公共工事を受注し成長。
施工のみらずアスファルト廃棄物の回収や、再生アスファルト合材の生産で事業拡大し舗装業界を牽引してきた。その一方で事業の先行きを案じ、商圏拡大や舗装工事以外の一般土木、農業土木事業のシェア拡大を狙い県内の中堅土木建設会社を買収したり、ガーデニング事業で民間需要の掘り起しをするなど仕事の確保に奔走していたが、公共事業減少にともない地域経済自体が低迷。
「仕事は順調に受注できても、慢性的な労働者不足を抱えたままでは会社を成長させることができない。」2001年に先代から経営を引き継いだ山口社長は買収によるM&Aを検討し始める。しかし自身の健康問題を機に、少しでも早く自社を成長させてくれるパートナーと組みたいという思いで買収から一転、譲渡を模索。「従業員に将来の不安がない状態で勤務してもらい、即戦力の従業員体制を強化するためにも、大手の傘下に入って、経営できる人に会社を引き継いでもらいたい」と思いで候補企業探しを始める。
そして有力候補先の一社に挙がったのが、電気通信工事業界大手コムシスホールディングス株式会社の傘下で、北海道エリアを統括する株式会社つうけんだった。
つうけんは北海道各地で電柱を道路に建柱してケーブルを架ける工事を手掛けており、北有建設と組むことで舗装工事の一部をグループ内で完結することが可能となる。また、つうけんは電気通信に限らず、インフラ工事全般に進出する経営戦略を描いており、北海道エリアの舗装工事会社をグループ内に迎え入れたい思いがあった。
従業員の高齢化が進む土木業界の中でも、北有建設は30代、40代の社員が大勢在籍し十分に若い会社であり、技術が継承されているという点もつうけんにとって魅力的だった。
北有建設にとっても、北海道の建柱工事で圧倒的なシェアを誇るつうけんから直接舗装工事を請け負うことでさらに営業基盤を強化できる点をメリットに感じていた。
同業大手他社と組むと、北海道の会社は事実上の「北海道支社」「北海道営業所」になりかねない。パーツとしてではなく、あくまでも一企業として成長していきたいと考える山口社長にとって、県内の隣接業種大手とのパートナーシップは十分検討に値する選択肢であった。そして2018年2月につうけんに株式交換のスキームを用いて株式譲渡することを決断した。
M&A実行後の成果
2019年2月の契約締結後、譲受側が上場企業であるためプレスリリースの配信や北海道新聞にも記事が掲載された。
本件は秘密裏に進められていたため、北有建設の社員たちは報道で初めて自社のコムシスグループ入りを知る。発表後、つうけんの社長や幹部同席のもと、全社員向けに提携の背景含めた説明が丁寧に行われたことで混乱は最小限に済んだ。
北有建設の山口社長はM&A完了後退任する道を選び、新社長には、過去につうけんが譲受けた会社を前オーナーから引き継いで経営していた人物が就任。コムシスホールディングスのグループに入った企業の経営、PMIを手掛けた経験から最適な人物として選ばれた。
M&A後は課題だった人材面は、一部上場会社であるコムシスホールディングスのグループ傘下に入ったことによりブランド力が向上し、積極的な採用活動が進められている。今後両社のシナジー効果の創出が注目される。