事業会社への譲渡・売却に関する事例紹介

事業の成長に立ちはだかる「品質の担保」と「物流網」を一挙解決

事業の成長に立ちはだかる「品質の担保」と「物流網」を一挙解決

譲渡企業: オフィスコム株式会社

所在地
東京都
事業内容
オフィス家具の通販、オフィス内装に関する設計・施工 
売上高
約30億円(2015年12月期)
代表
高橋 和哉 氏
従業員数
約70名(契約社員等含む)※情報は全てM&A直前のデータ

譲受企業: プラス株式会社

所在地
東京都
事業内容
事務所用・店舗用装備品製造業
売上高
約1,270億円(連結:2015年12月期)※情報は全てM&A直前のデータ

M&A実行の背景

オフィス家具の企画・製造・販売を行うオフィスコム株式会社は2007年に創業。高橋和哉社長は自らの起業経験から、創業時の企業にとってオフィス家具コストが大きな負担になる点に着目し、低価格のオフィス家具の提供で起業の活性化、日本経済への貢献を目指した。
同社は家具の企画から製造、販売までのバリューチェーンを垂直統合で行うことで低価格を実現。また、業界の中でも早期から自社ECサイトでの販売に特化し、順調に売り上げを伸ばしてきた。

そんな最中、2つの課題が立ちはだかる。

1つは「品質の問題」。
協力工場が海外にあるため品質管理が難しく、不良品が混在してしまうことや、配送の梱包が不十分なために配送中に破損するケースがしばしば発生していた。

もう1つは「独自の物流網の構築」。
全国一律で対応可能な体制を構築するための設備投資・人員確保が、単独では困難であり、インターネット通販を支える自社物流網の構築が喫緊の課題として挙がっていた。

これら課題を解決し、自社のさらなる成長を目指すために高橋社長がたどり着いたのがM&A戦略だった。当初は譲渡案件を探していたが、多くの候補企業と向き合う中で、特に物流網構築の実現には「次々と買収を重ねる必要がある」と気づいた高橋社長は方針を転換。自社より大きなパートナーと組むことを模索し始めた。

そして有力候補として挙がったのが大手文具・事務用品・オフィス家具メーカーのプラス株式会社だった。同社は流通モデルの創造に注力し、オフィス用品の通販事業としてスタートさせたアスクルは、のちに上場を果たしている。
メーカーとしてものづくりのノウハウが蓄積されており、物流関連会社をグループ傘下に保有するプラス社はオフィスコムにとって理想的なパートナーに映った。
一方のプラス社はネット通販事業展開に苦戦しており当初期待していた成長カーブが描けていなかった。オフィスコムを傘下に迎えることで、手薄だった低価格帯商品とこれまで獲得できなかったベンチャー企業の顧客層をカバーできると捉えた。

互いに不足を補い合える関係であること。顧客を大事にする姿勢や、新しいことに挑戦するベンチャースピリットなど根本にある価値観が共通することから、ともに理想的なパートナーとして具体的な検討を開始。そして2016年にオフィスコムはプラスに株式譲渡することを決断する。

M&A実行後の成果

M&A後、プラスを参考にオフィスコム独自の品質基準の策定や、品質基準をクリアするための検査機器の導入を進め、課題だった品質の改善が見られた。これら設備投資は大手であるプラスと組んだことで実現できた。

また、これまで埼玉を中心に四カ所に分散されていた倉庫を、千葉県柏市に開設した東日本物流センターに集約。プラスのグループ会社が運営を担うことで物流網も大きく改善した。
組立サービスも、関東の一部から東日本全域に拡大し、全国一律の配送サービスに向けて大きく前進した。これらシナジーは大きく、オフィスコムの売上高は約30億円(2015年12月期)から約47億円(2016年12月期)と前年比160%の急成長を遂げる。
前年比160%は驚異的で、M&Aによって成長にドライブがかかったことは間違いない。

高橋社長はM&A後も引き続き社長を続けていたが、さらなる成長軌道に乗ったことを見届け、2017年1月に退任。新事業に挑戦していく。

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