PEファンドが主導となって社長を招聘し、事業承継をした事例
PEファンドによる後継社長選び
金城重機株式会社は1987年創業。千葉県の本社のほか全国12 箇か所に営業所を展開し、100名を超える社員を抱える中堅企業として地盤調査、地盤補強工事などの事業を営む。
同社は2018年にPEファンドである日本協創投資株式会社とのM&Aを実施。
その後引継ぎ期間を経てリタイアする創業経営者に代わって、同社の舵取りを任せられる後継社長を、日本協創投資の吉田氏・中山氏が中心となって選定。人材紹介会社などから紹介された10名人以上の後継社長候補者と面接を進め、最終的に、経営者の資質の基準をクリアし、同社に近い業界での経験を持つ浦澤氏に白羽の矢を立てた。
浦澤氏は新社長候補に応募した理由として、同社を以前から「技術力が高く、営業力を強化すればまだまだ成長できる」会社と認識しており、成長ポテンシャルの高さに関心を示していたこと、PEファンドの力を借り成長を目指す同社の賢い選択に共感したことを挙げている。こうして、浦澤新社長とPEファンドが手を取りながら、新しい金城重機の舵取りがスタートした。
新社長とPEファンドによる社内改革
M&Aに際して「今回のM&Aと社長交代は、会社が次の成長ステージに進んでいくためのひとつのステップであること」を社員に丁寧に説明することで不安の解消につなげた。
また説明の際に「PEファンドはあくまで3~5年の“期間限定"での手伝いでありいずれいなくなる」こと。「それまでに社員が自立して業績向上を目指して動けるような仕組みを作る必要がある」ことをしっかり伝えたことで、社内の理解促進が高まった。
管理面では、それまで前オーナーの属人的だった管理体制を見直し、新たに管理部門のトップ人材も採用して、人事、労務などのバックオフィス業務の見直しを行った。
組織構造も以前のトップ集中型の構造から、部門ごとにトップを置いた階層構造へと改変。各部の予算もしっかり設定し、予算に対して上回る達成をすれば賞与で還元するなど、数値に基づいた目標管理を実施した。当初は、組織変更や予算管理などに戸惑っていた社員従業員たちも、慣れていくにつれて、予算内での自主的な業務活動が可能になったことを前向きに受け止めている。さらに業務改革によって今後企業価値が向上していけば、待遇改善につながるという考えが広まり、社員が自主的、自律的な業務改善に取り組む場面が増えてきている。
また、同社のPEファンドとのM&Aについては、取引先顧客や外注先、メインバンクなどからも注目され、経営の安定性が高まる期待感から好意的に受け止められている。そして高齢の経営者が多い土木業界内で本件は、PEファンドを介した事業承継のモデルケースとして注目を集めている。