「今年の漢字」は「戦」ということで、ウクライナ戦争、円安・物価高といった不安なものからFIFAワールドカップの盛り上がりなど前向きなものまで、大きな変動があった一年でした。IPO業界においては、株式市況の不安定さに加え、東証の市場再編もあり今年は低調ではとの予測もありましたが112社(予定含む)が新規上場を果たす結果となり、改めてこの業界の潜在的なニーズの高さを知ることとなりました。
1年の締めくくりとして、2022年のIPOの特徴をいくつかの観点からまとめてみました。

中堅中小の監査法人がIPO業界で躍進!

2022年新たに一般市場へ上場した企業の監査法人は、4大監査法人以外の中堅中小監査法人が約4割のシェアを持ち、4大以外の監査法人実績の増加が昨年から続いている状況です。
特に、TOKYO PRO Market市場においては、新規上場21社中約9割の18社が大手以外の監査法人を選択する等、中堅中小監査法人の活躍が近年目立ってきています。
 

2022年 監査法人IPO監査社数ランキング

一般市場(プライム、グロース、スタンダード)

第1位     EY新日本有限監査法人 18
第2位     有限責任監査法人トーマツ 15
第3位     太陽有限責任監査法人 11社

 

TOKYO PRO Market市場

第1位     監査法人コスモス  5社
第2位     EY新日本有限監査法人 2社
              ひかり監査法人 2社
     大有監査法人 2社

市場再編や株式市況の影響もあり、一般市場は時価総額重視の方向へ

 主幹事数ランキングは、以下のとおりですが、前年からの減少が大きかったのは野村證券とSBI証券でした。(以下、上記同様にて3位まで表記)
第1位:みずほ証券・野村證券(各27社)、第3位:SMBC日興証券(22社)、第4位:SBI証券(18社)、第5位:大和証券(12社)でしたが、2022年は第1位:SMBC証券・みずほ証券(各14社)、第3位:大和証券(10社)、第4位:野村證券(8社)、第5位:SBI証券(6社)となり、大和証券は前年並み、その他は大きく社数を減らす結果となりました(2022年11月末時点)。

2022年4月に実施された東証の市場再編で大手証券会社は時価総額100億を目安に、新規性・成長性のあるビジネスに注力する姿勢が強まり、不安定な株式市況の中安定性も求めた結果とも言えます。
いずれにしても、一般市場への上場は“狭き門”である状況は続きそうです。
 

TPM市場は地方創生を担う中小企業の成長に特化した社会性あるマーケット

一方、TPM市場は昨年に引き続き堅調な成長を見せており、年末にはTPM上場企業数は65社に到達、2022年新規上場企業数は21社と、過去最多を大きく上回る見込みです。
TPMの上場指導・審査を担当するJ-Adviser(一定水準の資格要件も満たし、東証から認定を受けた機関)も2022年11月末時点で計15社と昨年以上に充実し、TPMへの上場サポート体制が拡がっている傾向にあります。
J-Adviserの2021年、2022年それぞれの担当企業数は以下のとおりです。

J-Adviserの上場支援の状況(TOP5)

2021年

第1位      フィリップ証券 6社
第2位      その他 4社
第3位      日本M&Aセンター 3社
 

2022年

第1位      日本M&Aセンター 7社
第1位      フィリップ証券 7社
第3位      その他 5社

※記事作成日:2022年12月19日時点で上場済み会社数をカウント


2021年は業界老舗のフィリップ証券が約半数を占めておりましたが、この1年で弊社上場支援体制もサービス内容・メンバー共に大幅な充実を図り、2022年は弊社がようやくトップに肩を並べるところまで伸ばしてきました。
また上場する企業の内容にも変化が表れています。以前は小規模の企業の上場も見られましたが2022年は一般市場の上場も十分目指せる有力企業の参戦が目立ちます。
今年のトピックスとしては、2022年11月4日にTPMに上場した株式会社AIR-U(東京都渋谷区)は、従業員数8名、売上高91億・経常利益6.8億、時価総額215億と、従業員1人あたり時価総額は一般市場に入ってもトップクラスの高生産性企業であり、容易く上場できる市場から優良企業が集まる市場への変貌を遂げようとしています。

>>関連:株式会社AIR-U IRレポート掲載ページはこちら

 

懸念されるIPO難民問題

IPO市場の盛り上がりが出てきた一方で、監査法人、証券会社をはじめとしたプレーヤーのリソース不足問題が顕在化しています。裾野の広いTPM市場はその受け皿になるとの期待の高まりは日々強まっていることを感じますし、TPM市場を支える新たな監査法人の誕生も増えており明るいニュースもあり、弊社としてもリソース不足の解消に向けた取り組みを強化していきたいと考えております。
いずれにしても「思い立ったが吉日」、早めの準備をするに越したことはありません。社会の公器として自社を強く発信したいとの思いが強まった経営者に対して、我々も力強く背中を押したいと考えております。
 

上場に関して最も多い問い合わせとは:「うちの会社そもそも上場できる?」

TPM市場の活性化で「上場」に関心を持つ企業・経営者は確実に増えました。
弊社にて問い合わせをいただいた経営者の圧倒的多数が「そもそも上場なんて考えていなかった」「上場は株主が増えるなどデメリットしかない」などとお考えの方々です。
よって上場の入り口で何をすれば良いかわからないのと同時に、本当に上場できるのかとの不安を持たれることは当然の心理だと思います。

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