[M&A事例]Vol.133 「良い仕事をしたい」――。2社譲り受け生き残りを図る創業75年の老舗樹脂素材製品メーカー
樹脂素材製品メーカーのカツロンは、1年半で2社を譲り受けました。元々成長戦略にはなかったM&Aをなぜ行ったのか、M&Aの目的と現在について伺いました。
譲渡企業情報
※M&A実行当時の情報
妻と海外旅行に行っては、 撮影した写真をギャラリーに展示
伸一様: 今は完全に経営から引退し、リタイア後の生活を夫婦で楽しんでいます。これまでに75回海外旅行にいきましたが、そのほとんどは引退後に夫婦で行きました。今年だけでオーストリア2回、イタリア2回、ナミビア、ニュージーランド、アラスカ、アメリカに行っているのですが、毎月旅行の予定があって、仕事をしているときよりも忙しいくらいですね(笑)。妻から薦められて60歳の頃に写真を始め、カメラをコレクションして旅行のたびに美しい自然風景を撮影しており、自分のギャラリーもつくって写真を展示しています。
M&A後は精神的にとても楽になりました。29歳で創業してからずっと経営者として走り続けてきて、もちろんそれはとても充実した日々でしたが、その日々を経て本当に好きなことをしている今は心から幸せだと感じています。
社員が全国で活躍する場をつくるため、M&Aを実行
伸一様: M&Aをすることに対して、迷いはありませんでした。娘2人は経営者のもとに嫁いだため後継者がおらず、年齢的なこと、自分の病気のこと、社員の将来のことを考えると、他に選択肢はありませんでした。もともとは55歳でリタイアしようと思っていたのですが、株の買い取りや連帯保証問題もあって社員には事業承継できないとわかりました。70歳が見えてきた頃メインバンクの青森銀行に相談して、青森銀行が提携する日本M&AセンターにM&Aのお相手探しを依頼することになりました。
成長志向の社員には、この八戸だけでなく日本全国で活躍する場をつくってあげたいと考えていました。そういう意味で、東テクさんは上場していて全国に拠点を持ち、当社のビジネスへの理解もある、これ以上ないお相手です。日本M&Aセンターから紹介された3社の買い手候補企業と面談をしたのですが、東テク創業者の草野会長にお会いしてみると気骨のある立派な経営者で、尊敬の念とともに、この人に会社を任せたいと感じました。
奥様はM&Aに大賛成 「良いお相手に出会うのはタイミング」
靖子様: 私は大賛成でした。M&Aはタイミングだと思います。良いお相手にめぐりあうのはいつでも可能というわけではありません。私自身、ずっと経理などを手伝ってきましたが、デジタル化についていけない部分も徐々に出てきて、引退を考えるようになっていました。ですから、日本M&Aセンターの森口さんに素晴らしい会社を見つけていただき、東テクさんに会社を大きくしてもらって、本当によかったと感じています。
M&Aをするとき、娘からは、「お母さんはこれまでずっと仕事を頑張ってきたのに、急に環境が変わって大丈夫?」と心配されましたが、夫と一緒に世界中を回り、さまざまな文化の人に出会い、美しい景色をみることができる今の暮らしは心から幸せです。旅行後はお土産を周囲の方々に配り、写真をお見せしたりするのですが、皆さん世界一周している気分になれると喜んでくださるので私もうれしいです。いまの私たちがあるのは周囲の人たちのおかげですから、今後も感謝の気持ちをお伝えしていきたいですね。
経営のプレッシャーから解放され視野が広がった
伸一様: 経営のプレッシャーから解放されたと同時に、勉強になることがたくさんあったということです。それまでは、ひたすら自分の会社の業績や人事など社内のことばかりを考えてきましたが、M&A後、外の世界に触れ世の中の経済の流れを理解し客観的に自分の会社を見たことで、価値観が変わりましたし、自分のこれまでの生き方に誇りを持つことができました。世界中を回ってはじめて、日本の良さを確信することができたのと同じです。長年会社を経営してきたこと、そして無事にM&Aを成功させ会社を存続させられたことは、社会や周囲の人への貢献につながったと誇りに思っています。
残る社員のために、潔く経営から手を引く勇気も必要
伸一様: M&Aの目的をはっきりさせておくことで、迷いなく正しい決断をすることができます。スムーズな承継のため、良い業績をあげ会社の価値を高めておくことも大切だと思います。自分が育ててきた会社ですから名残惜しい気持ちもありますが、経営からすっと手を引く勇気も必要です。
東テクさんからは、「M&A後は会長になってください」と言っていただきましたが、私は「すぱっと縁を切って新体制で経営した方が良い」と伝えました。最終的には、他社から誤解を招かぬよう1年ほど「相談役」になることを引受けましたが、名刺を持っているとやはり会社のことが気になってしまうものです。あとに残る社員のためにも、どこで手を引くかというのは重要なことだと思います。
安心してバトンタッチできたからこそ、今、趣味に全力投球出来ています。良い相手を見つけ、最後まで丁寧にサポートしてくださった日本M&Aセンターの森口さん、三宅社長にはとても感謝しています。いまの私たちの幸せな生活があるのは、日本M&Aセンターのおかげだと、いつも妻と話しています。二人とも元気なうちに、まだまだ旅行に行く予定です。そのため、毎月届く旅行雑誌を見ながら、次にどこにいくか妻とふたりで話し合っています。
全国には承継に悩まれている経営者の方がまだまだいらっしゃると思いますが、みなさまがみなさまにとってベストな決断をしていただければと思います。
この事例は日本M&Aセンター社長三宅の著書『会社・社員・お客様 みんなを幸せにするM&A』に掲載されています。
樹脂素材製品メーカーのカツロンは、1年半で2社を譲り受けました。元々成長戦略にはなかったM&Aをなぜ行ったのか、M&Aの目的と現在について伺いました。
ダクトの部品製造を手掛ける森鉄工業のオーナーは70歳を超え、後継者不在や会社の課題解決のために他県の会社に譲渡を行いました。
総合印刷会社エムアイシーグループは、約半年の間に3社を譲受けました。M&Aの目的、成約後のPMIについて話を伺いました。
まずは無料で
ご相談ください。
「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。
情報開発部 課長 森口 忠之
M&A成約式での松本様のご挨拶で、「青森の企業から全国区の企業に生まれ変わることができました」というお言葉に、経営者としての責任を果たされた思いが詰まっていました。引退後は体調も良くなられ、充実された生活を送っておられるとのことで、大変嬉しく思います。 私も、これからも後継者問題解決や事業存続に貢献していく所存です。