[M&A事例]Vol.148 会社を成長させるため譲渡を決断。社長を継続し経営パートナーを得る
東北鈴木の2代目社長は、事業拡大を目指すものの方向性に悩んでいました。解決する手段の選択肢としてM&Aを考え、2024年3月に県外の会社に譲渡を行いました。
譲渡企業情報
譲受企業情報
※M&A実行当時の情報
株式会社岸本組は、2016年11月に札幌市にある土木工事業の株式会社金山建設をM&Aで譲り受けられました。代表取締役の岸本友宏様に、M&Aを実行された経緯やこれから目指す姿、譲り受け後のご様子についてお伺いしました。
【株式会社金山建設】 現・金山会長が創業した土木工事会社。大手からの信頼が厚く、下請け工事をメインに安定した受注を確保していた。業務レベルの高い作業員が多く在籍。後継者不在によりM&Aを検討していた。
【株式会社岸本組】 創業78年の公共工事を中心とした土木工事業者。30代の三代目社長で、拡大志向が強くM&Aに対しても積極的な姿勢であった。
自社一貫体制の構築を目指し、M&Aに着手
岸本様: まず、建設業界全体が厳しい状況にあることについてお話します。多くの元請業者にとって、下請業者の確保は大きな経営課題となっており、当社も例外ではありませんでした。「コンクリートから人へ」という時代に、多くの下請業者が倒産、廃業に追い込まれたからです。
下請け確保が難しくなっていることに加え、複数の原因が組み合わさったことによるコスト上昇の問題もあります。主な原因は3つ。(1)人材の高齢化(2)人材不足による作業効率の低下(3)安全管理の強化の必要です。人材の高齢化と人材不足による作業効率の低下は、コストの増加だけでなく過重労働にも繋がりかねません。当社でも、人材不足の影響が工程やコストに出始めるようになり、「これは一過性のものではない、早く手を打たないと」と行動に移す決意をしました。
岸本様: 私は、一つの工事を完成するためには、すべて自社で一貫して行えるような体制にすることが、今後の建設業者にとってのベストな姿だと考えています。
今後も安定した業績を維持するため、しっかりとした地盤を固める方法の一つとして、M&Aの活用を決めました。建設関連業者をグループ化し、自社一貫体制の構築を目指しています。
もちろん、人材を採用し体制を築いていくという方法も考えましたが、経営者の高齢化や後継者不在問題からM&Aを希望する相手先が多くいる、という現状を知っていたことがM&Aを選ぶ後押しになりました。人材を採用し育成するのと比べて、早く戦略を実現できるのもM&Aを選んだ理由の一つです。いよいよM&Aに向けて行動を開始しようかと考えていたときに、日本M&Aセンターさんから電話があり、金山建設の紹介を受けることになりました。
岸本様: 中小企業同士のM&Aでは、相手企業に「キーマン」がいるかどうか、を最も重視しています。私は、譲渡企業から経営者が生まれるべきだと思っているからです。一方で、M&Aを機にキーマンが独立してしまわないか、という懸念はありますので、日本M&Aセンターの徳山さんを通じてキーマンの意向を探ってもらいました。
また、具体的なポイントとしては、将来の売上・利益を上げる余地があるかという観点から、譲渡企業の顧客先の状況、福利厚生、雇用環境・待遇、人材採用・育成を判断のものさしにしています。
PMIのコツは「会社の安定に力を注ぐこと」
岸本様: 11月に経営譲渡を受けてから、冬の間は、「教えてもらうこと」に徹しました。金山建設の従業員から、岸本組では実績のなかった業務について教えてもらう一方で、雇用環境や待遇向上の取り組みを始めたり、新年度以降の体制について考え始めたりしていました。11月に経営譲渡を受けてから、冬の間は、「教えてもらうこと」に徹しました。金山建設の従業員から、岸本組では実績のなかった業務について教えてもらう一方で、雇用環境や待遇向上の取り組みを始めたり、新年度以降の体制について考え始めたりしていました。
冬の業務が落ち着いた3月に、社員全員を集め、まずは現状の問題点や課題を正直に話してもらいました。それらを考慮し、今後の組織体制や経営方針、業務体制を伝えました。従業員全員が望んだ環境を実現できるよう、都度打合せを重ねながら進行しています。
岸本様: 会社を大きくするためにM&Aを実行に移す方は、必ず野望を持っていると思います。しかしM&Aを実行した後は、その野望は最終目標としてしばらくは心の奥にしまって、まずはその会社を安定させることに力を注いでいただいた方が良いと思います。それがPMIをうまく運ぶコツだと思います。
中小企業のオーナーや経営者が変われば、会社の屋台骨が揺らぐのは当然です。そこをいかに早く、強固なものに修正するか、そのために必要なのは、社員からの信用を得るために行動することに尽きます。もちろん、社員の言いなりになる、社員を甘えさせるということではなく、新しい経営者が思い描く新しい職場環境の姿を早く整備するということです。売上を伸ばすのも、利益率を向上させるのも、経営者ではなく、そこで働く社員です。社員の力を最大限に引き出す職場環境を作ることが、経営者の仕事だと思っています。
東北鈴木の2代目社長は、事業拡大を目指すものの方向性に悩んでいました。解決する手段の選択肢としてM&Aを考え、2024年3月に県外の会社に譲渡を行いました。
沖縄県で防水工事業を手がけるヤマト防水工業は、10年後の譲渡を見据え準備を始めたところ、想定より早くにお相手が見つかりました。その経緯やM&A後について伺いました。
北海道全域で道路の舗装工事を行う道路建設は、当初掲げていた条件とは異なる企業を譲り受けます。M&Aから1年たった今、決断の背景と現在の状況を伺いました。
まずは無料で
ご相談ください。
「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。
徳山 (岸本組様 担当)
北海道における建設業は主要産業の一つですが、人材不足や長期的な受注減少トレンド等経営環境は厳しいものがあります。そういった中、岸本社長が会社を引き継ぎ、強い企業への成長を模索していた岸本組様のお手伝いをできたことは、北海道地域経済発展にもつながるもので嬉しく思っています。両社の今後の益々のご発展を記念しております。