[M&A事例]Vol.145 地元優良企業の経営危機。初M&Aで譲受けを決めた経営者の決断
北海道全域で道路の舗装工事を行う道路建設は、当初掲げていた条件とは異なる企業を譲り受けます。M&Aから1年たった今、決断の背景と現在の状況を伺いました。
譲受け企業情報
※M&A実行当時の情報
愛知県東海市で公共事業の土木工事や不動産販売業などを手掛けるナカミライズホールディングス。これまでグループとして5社以上を譲り受け、内製化やエリアの拡大を図ってこられました。今回は同県内で戸建住宅の販売を営むカスタムハウジングコーポレーションをグループインすることで不動産事業の拡大を目指します。中村 陽公代表に同社のM&A戦略をお伺いしました。(取材日:2023年3月6日)
――事業内容や強みを教えてください。
譲受け企業 ナカミライズホールディングス 中村様: 当社は1970年の創業以来、公共事業や民間の電力会社、製鉄会社などの土木工事を行う中村土木建設と、不動産仲介や注文住宅事業を行う中村不動産を中心に事業を広げてきました。東海市で生まれ育った企業として、上下水道、道路、河川改修などのインフラを中心に街づくりに関わる事業を通じて、未来の地域づくりに貢献したいと考えています。 当社の強みは周辺事業の内製化による高い機動力です。水道や空調の設備業を行うウカイ設備、重機やダンプを扱う協立工事などをM&Aでグループインしました。
そのほか、保育や介護事業も展開しています。元々は福利厚生施設として従業員が働き続けられる環境を整備することが目的でしたが、今では地域の多くの方に利用していただいています。
――M&A戦略を進める理由を教えてください。
中村様: 本業の土木工事業を拡大するには、M&Aが最善だと考えました。例えば公共事業の工事の入札では、対象エリアに本社所在地を有することが条件となることもあり、支店や営業所では入札に参加できません。実績のある会社と提携することで歴史をそのまま引き継ぐことができ支店や営業所を出すよりも早く売上につながりますので、M&Aで事業を拡大していくことを決めました。
譲り受ける対象としては、土木建築のほかに、関連する電気工事や舗装を手掛ける会社も探してきました。これまで5社以上譲り受けてきましたが、日本M&Aセンターには、今回のカスタムハウジングコーポレーション含め4社仲介いただいています。
当社がM&Aを進めるもう一つの理由は社会貢献です。愛知県のみならず日本全国では後継者不在で廃業を考える中小企業経営者が多くいます。廃業すれば、従業員や取引先、家を建てたお客様など大勢の人が困りますよね。後継者不在で悩む会社を引き継ぐことができれば社会貢献にもなると考えM&Aに取り組んでいます。
――カスタムハウジングコーポレーションとのM&Aを決断した理由を教えてください。
中村様: カスタムハウジングコーポレーションは不動産販売会社ですので、建材や住宅設備など、資材調達面で仕入れ先の選択肢が増えることでスケールメリットが出ると考えました。
また、土地の仕入れを得意とし、飛び込みで地主から直接相談がきたりしているということは、地域で信頼を獲得している証拠でもあります。何より住宅の戸建のノウハウを持っている会社です。当社グループの中村不動産では、インターネットを受注窓口とした「イースタイルホーム」やスマートフォンでVR体験をして家づくりを考えるジブンハウスを手掛けており、今後は両社でネット販売事業を展開していきます。SNSを活用した広告宣伝も行い、さらなる顧客獲得に向けて動いていきたいと考えています。
―――提携して2カ月ほどですが、経営統合の進捗はいかがでしょうか。
中村様: 提携後の進め方について、カスタムハウジングコーポレーションの藤澤 伸安社長からは「ナカミライズのやり方でやってほしい」と言っていただきました。非常にありがたいですし、順調に統合を進めることができています。 現在は、当社の従業員を派遣し、ナカミライズホールディングスの文化を少しずつ取り入れているところです。就業規則についても、カスタムハウジングコーポレーションはこれまで年中無休でしたが、定休日を作り従業員の休みを増やしました。小さなお子さんがいる従業員もいますので、「子どもや家族と一緒に遊ぶ時間ができました」と喜んでくれています。
従業員の皆さんには、企業理念や経営方針に沿って当社が定義する「いい会社」について説明し、カスタムハウジングをよくしていきましょうと伝えています。当社の考える「いい会社」は、お客様に商品やサービス品質を通じて喜んでもらい社会貢献をする、働く仲間が喜ぶ仕事をする、高収益を生み出す、この3つの満足がそろうことです。その結果として豊橋で戸建て販売数を1番にすることが目標です。
――これまでのご経験から、M&Aを成功させるポイントはどこにあるとお考えでしょうか。
中村様: 譲渡オーナーをリスペクトすることです。これはもっとも大切だと思います。従業員は、待遇が保障されるのか、給与や役職が下がるのではないかと不安になりがちですので、そのネガティブな考えをポジティブに変えることが大切です。私が伝えたいことがしっかり伝わるように、従業員が心を開いてくれるまで待つことも意識しています。
そして、今までのM&Aの経験をもとに説明をすることです。例えばこれまで譲り受けた会社のなかに、5期連続赤字で債務超過の会社がありました。そのとき私は給料を取らないことにし、一方で従業員の待遇は変えずに、半年でV字回復させ賞与を出せるまでにすることができました。こうした実際の会社のM&Aとその後日談を話すことで、安心してもらえるようにします。また、私が言っていることに対して疑心暗鬼になっている従業員には、過去にM&Aをした会社の従業員に、待遇が改善されたことや会社の変化について直接話をしてもらうこともあります。
――譲り受けた企業の人材育成にも力を入れているとお伺いしています。
中村様: 中小企業は月次の決算をしていない会社が多いのですが、幹部には事業活動の1カ月の結果を数字で見せるようにしています。1年目は見せるだけ、2年目からは年間計画を作成してもらい、目標に対しての達成状況や結果の理由、課題をどう解決していくかなど、自分たちの考えを自分たちの言葉で語らせます。どうするか私が指示を出すこともできますが、それでは従業員のためにも会社のためにもなりません。
私1人では何社も会社は経営できません。譲り受けた会社の中で経営者を育てることが重要だと考えていますので、事業の執行や意思決定など、経営に必要な要素は時間をかけて学んでもらうようにしています。
――今後の経営ビジョンを教えてください
中村様: 現在は63億円であるナカミライズグループの売上を、200億円にすることを目指しています。また、ナカミライズホールディングスをM&Aで提携した同業種の会社のデータセンター的な役割を担う構想を練っています。例えば、これまで各現場担当が行っていた竣工書類などの作成をデータセンターに情報をあげて、専門チームが書類作成に対応することで、品質の標準化や現場の施工管理の生産性向上につながります。
実現すれば、休みが少なく残業が多い建設業界のイメージを払拭することができると思っています。私は70歳で引退すると決めていますので、残り9年、M&Aを活用しながらビジョン実現に向けて取り組んでいきます。
北海道全域で道路の舗装工事を行う道路建設は、当初掲げていた条件とは異なる企業を譲り受けます。M&Aから1年たった今、決断の背景と現在の状況を伺いました。
自前でPMIに取り組む難しさを痛感して日本PMIコンサルティングのPMI支援サービスを利用。ご自身の経験からPMIの難しさと効果について伺いました。
空調・換気・給排水衛生設備工事、冷凍冷蔵設備を展開する三共ホールディングスに。空調施工会社を譲受けた目的、企業の譲受けで大切にしていることを伺いました。
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「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。
法人事業部 西日本事業法人1部 グループリーダー 田代 多郎 (ナカミライズホールディングス株式会社担当)
当社で仲介をさせて頂いた4社目の提携となります。中村代表の構想力、実行力、そして何より人間力が優れているからこそ、オーナー様からの信頼を得て、譲り受けた後も成長を続けていると感じております。中村代表の夢である年商200億円グループが果たせるよう、微力ながら今後もお手伝いをさせて頂ければ幸いです。