[M&A事例]Vol.140 医薬品×食品、異色のM&A。120年以上の歴史にカイゼンの風を吹き込む
ジェネリック医薬品の卸売業を営む八戸東和薬品は、異業種のきちみ製麺を譲受けました。約2年経った現在話を伺いました。
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※M&A実行当時の情報
2012年4月、当社がお手伝いしてM&Aを実行された2社、伊丹様(富岡調剤薬局)と田中様(メディカルシステムネットワーク)をお迎えし、M&Aを決意された理由や当時の心境などをお聞きしました。
伊丹様: 富岡調剤薬局は、群馬県の富岡市に5店舗、東京1店舗、沖縄1店舗の合計7店舗の調剤薬局を運営しています。大手調剤チェーンが参入しにくいといわれる群馬県で35年の業歴を誇り、県内でも存在感のある企業へと成長しました。
M&Aを実施した理由は、事業承継問題に直面したことと、調剤業界の将来的な業界環境を考えた結果でした。調剤薬局の経営は「間違いのない薬の調剤」と「労務管理」に尽きます。この2点を追求して、信頼を得ながら成長してきました。しかし私が60歳となり、積極経営を維持するためにも「そろそろ次の世代へ」、と考えるようになりました。会社を承継するにあたり、まず子供たちに相談しました。息子は歯科医師をしており、将来的にも調剤薬局経営をする気はないことを確認しました。娘もすでに嫁いでいます。
一方外部環境として、調剤薬局業界は今後厳しくなるだろうと予想していました。医療費圧縮で薬価差益も薄くなっていきます。そんな中、安定した業績を継続し、人材を確保していくことは地方の調剤薬局7店舗では難しいのでは、と思うようになりました。社員の雇用確保も含めて、今のうちに大手チェーンの傘下に入って経営を安定させる方が得策だという結論に至り、M&Aを決断しました。
田中様: 当社は、「なの花薬局」を全国で254店舗(2012年7月2日現在)展開する国内第6位の調剤薬局チェーンです。地域住民の皆様に健康に関する多様なサービスを提供する「地域薬局」を目指しており、薬局サービスの品質向上を図ると共に、積極的な新規出店で薬局店舗網のドミナント化を推進しております。 創業の地である北海道では100店舗を超える薬局網を展開しておりますが、本州・四国・九州での薬局網の拡大と地域医療への貢献が現在の重要課題です。近年は、資本業務提携を通じて、地域調剤薬局の存続と発展に貢献しようという考えを持っています。
当社としても北関東、特に群馬県は新規参入が難しい保守的な地域として、どのような店舗戦略を取っていくか課題でした。そうした時期に、事業承継問題を抱えているという富岡調剤薬局様との提携のお話をいただき、ぜひとも検討したいということになりました。
伊丹様: 選んだ理由としては、メディカルシステムネットワーク社の企業理念に共感できたからです。地域医療サービスを守るために多くの地方薬局と提携し、互いの経営基盤強化に取り組んでおられます。
提携といっても、地域で経営を続けていくために必要な体制は尊重していただけます。そうした理念の企業のもとへなら、今まで築いてきた薬局をお任せしてもいいと感じたからです。
伊丹様: 現在、役員も社員も活き活きと働いており、非常に安心しております。また人材確保の面でもかなり助かっています。瞬間的に薬剤師が足りない、といった場合でも、近隣県のグループ店からすぐに優秀な薬剤師の方々がヘルプに来てくれます。私自身は後々の心配がなくなり、引退するのに肩の荷が下りた思いです。
田中様: 今回の富岡調剤様とのM&Aは北関東拠点の増加への足がかりとなる第一歩でした。今後は、M&Aや新規出店戦略も交えて、積極的に店舗網を拡大していきたいと考えています。また、同じ理念をもって当社グループで一緒に地域医療を守っていただける地域の薬局オーナーの方々とは今後もさらに提携を進めていきたいと考えています。
こうしたグループ経営を通じて、地域調剤薬局の存続と発展に貢献していく所存です。
M&A成功インタビューは、 日本M&Aセンター広報誌「M&A vol.29」にも掲載されています。
ジェネリック医薬品の卸売業を営む八戸東和薬品は、異業種のきちみ製麺を譲受けました。約2年経った現在話を伺いました。
「地域医療のため、薬局を閉店させてはいけない」という信念を持つ調剤薬局オーナー。「本当の限界が来る前に引き継ぎ手を探したい」とM&A決断に至りました。
80年以上続く薬局を3代目として継いでこられた譲渡オーナー。当初、譲受け側としてセミナーに参加したものの自社の譲渡を決意した背景を伺いました。
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西川 大介
西川 大介業界再編が起こる要因は様々です。今回のケースでは、その背景に医療費の抑制・薬事法の改正・消費税の増税・調剤チェーンの全国展開、オーナーの高齢化および後継者難・薬剤師の採用難等の環境圧力がありました。自社の経営環境と業界での再編・合従連衡の要因を認識し、M&A戦略など今後の取り組みを具体的に検討していくことが、業界で勝ち残るための第一歩となるでしょう。